6月の横浜FC戦では今季最多となる4得点をあげるなど、上昇気流に乗るサンフレッチェ広島。新戦力の活躍、負傷者の復帰もあり、首位・鹿島追走に向けた体制も整いつつある。ここではOB・吉田安孝氏が、シーズン後半に向けた展望を解説する。(全2回/第2回)
◆カップ戦でも新戦力が活躍!得点力アップでタイトル争いへ
得点力という面では、やはりトルガイ・アルスラン、中島洋太朗の不在も響いていたと感じます。当然、相手チームはサンフレッチェを警戒し研究してくるわけですが、そこで意表を突くパスが出せる、相手の裏をかく攻撃を組み立てることができる存在の不在のは、チームにとっても小さくはない影響を及ぼしていたのではないでしょうか。
スキッベ監督の傾向として、故障者や離脱者が出たとしても、戦術やシステムを大きく変えて対応するということはあまりありません。システムを変えるのではなく、不在選手を補う他の選手を連れてくる。スキッベ監督はそうした補強の仕方をする監督という印象を受けます。
6月には柏からFW・木下康介を獲得しましたが、彼はポジションとしてはジャーメイン良と被る部分があります。だからこそ、連戦が続くこの夏場以降、ジャーメインの負担も少し減らすことができるのではないかと期待しています。ジャーメインと木下をうまく併用することで、お互いのコンディションがあがり、フィニッシュの精度も上がっていくのではないかと思います。さらに木下は身長190センチと非常に大型ですから、セットプレーの際のターゲットマンにもなってくれるでしょう。セットプレーはサンフレッチェにとって今シーズンの得点源の一つになっています。そういった意味でも、チームにとってプラスになるのではないでしょうか。
そしてもう一人、注目したいのはチョンミンギです。
6月4日に行われた福岡とのルヴァン杯プレーオフラウンド・第1戦 (●0−1)でJリーグ公式戦デビューを果たしたチョンミンギですが、他のクラブであれば即、正GKになれるのではないかと感じるほどの高いパフォーマンスを見せてくれました。初出場にも関わらず非常に落ち着いていましたし、足元の技術も高い。ボールを持って、あえてゆっくりと時間を使う場面もありましたが、初めての公式戦であそこまで落ち着いてプレーできるというのはなかなかありません。
そして、8日に行われたプレーオフラウンド第2戦では、チームを勝利に導くPKストップもありました。この先、カップ戦、天皇杯、ACLEと試合が増えてくる中で、大迫敬介に次ぐGKは絶対に必要です。そういう意味でも、チョンミンギの加入により守備面はより強固に安定してきたといえるでしょう。
やはり課題は攻撃面です。いかに前線が点をとるか。そして前線だけでなく、チーム全体として、『誰が、どこからでも点が取れる』ようになること。
セットプレー、リスタートから一つきっかけをつくり、得点につなげていくという意識を、改めて、選手全体で共有してもらいたいと思います。チームとして得点数をどんどん増やしていくことができれば、一気に上位に抜け出すことも可能になるでしょう。サンフレッチェは、それだけの力を持っているチームだと思います。
リーグ戦もいよいよ後半に突入しました。リーグ戦のホームゲームは、相変わらずチケットの完売が続いていると聞きます。ここからさらにギアをあげたサンフレッチェが、リーグ、カップ、ACLEと、複数のタイトル争いを繰り広げることに期待したいと思います。