CS争いに向け、勝負の8月に突入した新井カープ。苦戦した7月には大きく借金を増やしてしまったが、ここからはいかに勝ちを積み上げ、貯金ができるかがカギとなる。Aクラス入り、CS争いへ厳しい戦いが続くことが予想されるが、一方で、取り組むべき課題も明確だ。ここではレジェンドOB・大野豊氏が、ここからの展望を独自の視点で解説する。(データは全て8月7日時点)(全2回/第1回)
◆先発陣に勝ちがつかず、大きく負け越した7月
貯金2の状態で入った7月ですが、4勝16敗3分という結果に終わり、借金のある状態で8月に入ることになりました。阪神が首位を走っているとはいえ、2位以降のチームはどこも僅差で競り合っている状況でしたから、大きな連敗は避けなければなりませんでした。しかし、蓋を開けてみれば7月8日からは今シーズン二度目となる7連敗を喫し、大きな借金を背負うことになりました。
大きな要因として挙げられるのは、前回も話したように、チャンスで点を取ることのできない打線です。若手に経験を積ませながら、自分たちの力を出して勝てる戦いができるような状況をつくり出したいという新井監督の考えなのだとは思いますが、なかなか思うように機能しなかったという印象を受けました。
一方で、7連敗の終盤では、7点、6点と複数得点した試合があったにも関わらず、9回にクローザーが打たれて逆転されるなど投手陣に課題の見られる試合もありました。また、序盤に失点する、あるいは野手が点を取った直後に失点するなど、良い流れをつくり出せない試合があったことも事実です。ただ、やはり課題は打線にあると思います。例えば森下暢仁はここまで5勝12敗と負けが先行していますが、問題は、森下に勝ちをつけることのできない打線です。もちろん、森下自身ももう一踏ん張りしなければならない場面で失点するなど課題はありましたが、ゲームはしっかりとつくっているのです。打線があと1点、2点をとってくれれば勝てた試合もありました。今年、開幕投手も務めたエース格の森下が勝てていない。このことも、チームの低迷につながっているのではないかと思います。
今シーズン、6人でスタートした先発投手陣ですが、そのなかでも森下、床田寛樹、大瀬良大地には先発三本柱として期待が集まっていました。しかし現時点では、森下だけでなく、床田、大瀬良にも貯金がつくれていないというのが現状です。そして、この3投手の負けの数が、ほぼチームの借金になってしまっているのです。もちろん投手自身、打ちこまれてしまった試合もあるので反省は必要ですが、勝たせなければならない投手に勝ちがついていないこと。これには、打線の責任もかなりあるのではないでしょうか。
打順が固定できない、選手の好不調など不振の原因は様々にあると思いますが、出場機会を得た選手がどこまでやれるかということが重要です。若い選手だから勝てないということでは、ファンに対しても申し訳が立ちません。経験を積むことは確かに大切です。しかし、戦力になって得点をあげて、勝てる戦いを見せてほしいというのも正直な思いです。
ここからは、チャンスを得て経験値を詰んだ選手たちが、その経験を活かして活躍してくれることを期待したいと思います。先発投手にとっては、勝ち星が一番の良薬なのです。
(後編へ続く)