2022シーズンのルヴァン杯以来となる国内三大タイトル獲得に向け、負けられない戦いの続くサンフレッチェ広島。7連戦を戦い抜いた8月、逆転でルヴァン杯準決勝進出を決めた9月を振り返り、クラブOB・吉田安孝氏が注目の選手をピックアップして紹介する。(全2回/第2回)

日本代表アメリカ遠征メンバーにも選出。アメリカ戦でスタメン出場した大迫

◆これぞまさに日本代表GK!好セーブ連発の我らが守護神

 8月の連戦中は、大迫敬介のスーパーセーブに救われた試合も多くありました。9月にはアメリカ遠征のメンバーとして再び日本代表に選出されましたが、それだけの実力、パフォーマンスを惜しみなく発揮していたと言えます。

 GKは試合中こそ運動量は少ないですが、日々のトレーニングの負荷はフィールドプレーヤーよりも高いと言っても良いでしょう。試合日のウォーミングアップをご覧になったことのある方はイメージが湧きやすいかもしれませんが、真っ先にピッチに姿を見せるのはGKです。大迫もデビュー当時に比べると、体の大きさ、厚みがまったく別物のようになっていますし、試合に出て経験値を積むことで着実に成長してきました。反応速度も集中力も、まさにトップレベルのGKです。

 退場者を出してしまった8月20日の神戸戦 (●0−1、エディオンピースウイング広島)や、ドローに終わった31日のC大阪戦 (ヨドコウ桜スタジアム)でも、相手FWも思わず呆然としてしまうようなビッグセーブを連発していましたね。

 ただ、リーグ最少失点でここまで来ることができているのは、GKはもちろんDFラインをはじめとする全員の守備への意識の高さの賜物です。連戦中でも、暑さの厳しいなかでも、全員がその意識を高く持っていることはプレーをする姿を見ていても伝わってきます。

 前線の選手では、木下康介が途中出場でも非常に良いプレーを見せてくれています。サンフレッチェに加入してからのリーグ戦プレータイムは573分ですが、そのなかで4ゴールをあげています。9月3日のルヴァン杯プライムラウンド準々決勝では14分の出場で1ゴールをあげるなど、その精度の高さも魅力です。短い時間でも集中力を高めて自分の使命を遂行するということは、高い技術とメンタルがなければなかなかできることではありません。

 木下をはじめ、前線には能力の高い選手がそろっていますし、8月後半の試合では塩谷司と佐々木翔を交代で出場させるなど、スキッベ監督も選手のコンディションを見ながら起用を考えているように見えます。ACLEも始まり、海外アウェイを含む厳しいスケジュールはまだまだ続きます。選手、チームにとってはタフな期間になりますが、これだけ試合があるということは、裏を返せばそれだけサンフレッチェが強いクラブになっているということです。応援するファン、サポーターにとっても、痺れる試合が続くのはハラハラする反面、幸せなことかもしれませんね。

 個人的には、リーグ戦はもちろん、天皇杯で優勝するサンフレッチェを見てみたいという思いもあります。サンフレッチェの前身である東洋工業時代から、決勝戦には進出してもまだ優勝できていないのが天皇杯です。

 歴史のある大会で、いつかその頂点に立つサンフレッチェを見る日を楽しみにしたいと思います。