地元・広陵高出身、甲子園での活躍、ドラフト1位……注目を集めながら苦しむ日々を送ってきた中村奨成にとって、プロ8年目の2025年シーズンは充実の1年となった。一軍で結果を残し、来季さらなる期待がかかる背番号96が、改めて飛躍のシーズンを振り返る。(全3回/第3回)

2025年シーズンはキャリアハイの104試合に出場し、打率.282をマークした

◆スタッフ、監督、カープファン。数字が残せたのは多くのサポートのおかげ

─2025年シーズンは、結果を出したことで相手投手からの攻め方にも変化がありましたか?

 「変わったと思います。昨年までは代打が多かったので、変化球での攻めが多かった印象です。今年はスタメンで打席数も立たせてもらえているので、昨年とデータを比べても攻めの違いを感じます。その中で打っていかないといけないですが、僕1人の力ではここまで打てなかったと思います。スコアラーさん、コーチの方々を含めて、いろいろな人がアドバイスしてくれるおかげで、ある程度打てていると思います」

─さまざまな方々のサポートがあってこそなのですね。

 「そうですね。起用してくれた新井(貴浩)監督にも感謝です。本当に伸び伸びプレーをさせていただいたと思います」

─特にマツダ スタジアムでの打率が高く、良い数字が残っています。

 「マツダ スタジアムは好きですね。景色だったり、打席からの風景も含めて、もちろんホームということもありますし、気持ちの余裕も持てますし、僕は一番好きな球場です。マツダ スタジアムで何年かぶりにお立ち台にも立たせてもらいましたけど、今年こんなに立てると思っていなかったので正直びっくりしています。それだけチームに貢献できたのかなと思います」

─守備では主にセンターを守りましたが、手応えはいかがですか?

 「守備については慣れだと思います。最初は球が飛んできて、捕ることで必死で周りを見る余裕もありませんでした。センターを多く守らせてもらいましたが、捕手の構えも見やすいですし、打球の予測なども考えやすくなったと思っています」

─キャリアハイの数字が並びましたが、意識した数字はありますか?

 「こんなに一軍でプレーするのは初めてでしたし、毎日全力を出してきました。その中でここまで数字を残せると思っていませんでしたし、自分でも驚いています。あえて意識した数字を言うなら、出塁率、打率ですかね。ここは来季以降もこだわってやっていきたいです」

─今季、一番印象に残っている打席、一打があれば教えてください。

 「あり過ぎて分からないですね(苦笑)。今年は個人的にいろいろな事が起こっているので。答えになっていませんが、僕が出塁すれば、ホームに返してもらう可能性が高いなと感じていました。初回に僕が打てば、得点につながる事が多かった。そういう印象が強いです」

─2025年シーズンは、小園海斗選手とともに打線をけん引する存在となりました。小園選手の活躍をどのように見ていましたか?

 「彼はすごいですね。僕は足下にも及ばないです(苦笑)。首位打者、最多安打、出塁率争いをしているのを、間近で見させてもらえているので、来年は僕もそこに食らいつきたいですね。1年後輩ですけど、すごくリスペクトしていますし、ポジションは違いますけど、僕も頑張ろうという、良い意味での闘争心をくれています。普段は……敬語を使ってこないこともある……かわいい後輩ですよ(笑)」

─中村選手に対しての声援が特に大きくなっていましたが、感じるものはありましたか?

 「僕はいろいろ不祥事もあって、ファンの皆様を裏切ってしまうようなことをしてしまいました。にも関わらず、こんなにもたくさんのファンの方々から応援していただけるというのは、本当にうれしいですし、感謝しかありません」

─改めて、8年目の今シーズンは中村選手にとって、どんなシーズンだったと言えますか?

 「自分にとって今季は本当にいろいろな事がありましたけど、まず昨年の契約時に鈴木(清明)本部長に『お前のポテンシャルにもう1年かける』という言葉をいただいて、まずは残してもらえたことに感謝しています。オフにどう言っていただけるか分からないですけど、期待に応えられるようにしたい、というところからのスタートでした。その気持ちが頑張らせてくれたシーズンだったと思います」

■中村奨成(なかむら・しょうせい)
1999年6月6日生・26歳・プロ8年目
広陵高-広島(2017年ドラフト1位)
2025年成績:104試合 344打数 97安打 打率.282 9本塁打 33打点