プロ2年目となるシーズンは、プロ初先発、初勝利を飾るなど飛躍の年となった。キャンプ二軍スタート、開幕二軍とシーズン当初は苦しい日々を送っていたが、5月、野村コーチとのトレーニングをきっかけに流れが変わり、変化を見せつけた。確実に成長の跡を見せた背番号22に、変化の真相と今季の思いを聞いた。(全2回/第1回)
◆変化のきっかけは、野村コーチとの二人三脚でのトレニーニング
─今シーズンを振り返ると春季キャンプ、 開幕は二軍スタートとなりました。どういった気持ちで今シーズンをスタートされましたか?
「大卒2年目で一軍キャンプを迎えられないというのは、相当な危機感を持ちました。冬はウエイトや体づくりを取り組んでいて、しっかりやってきたと自負していた部分もあり、自信を持って春に入ったつもりでした。自分自身では手応えがあった中で二軍スタートだったので、今の僕の現在地と言いますか、実力では期待感がないんだなということを感じて、メンタル面でつまづいてしまった部分はありました。少なくとも若手の中ではそこまで期待されてないのかな……という危機感がありました」
─当時は葛藤もあったのではないでしょうか。
「自分自身との葛藤はすごくありました。ただ、当たり前ですが、そうだったとしてもやるしかないんですよね。目にかけてもらえているわけではないので、とにかく1試合1試合、シートバッティング、ピッチング1つにしても、必死でやらないといけないという思いは昨年と比べて変わった部分だと思います」
─二軍では先発、中継ぎとして登板する中、5月下旬には実戦から離れて、約2週間野村祐輔三軍コーチ兼アナリストの指導を受けられていました。
「下半身を中心に、フォームに通ずるための基礎的なトレーニングをやっていました。あの時期は本当に状態が悪くて、正直『どうしたらいいのかわからない』という状態でした。なので、できていないところを洗い出し、野村コーチに指導してもらっていました」
─それはノースロー的な感じだったのでしょうか?
「ブルペンにも入りましたし、シートバッティングにも投げていました。ずっと意識していたのは、フォームのギャップです。大雑把に言うと僕は体重移動が雑で、開きが早かったり、相手に分かりやすいフォームになっていたんです。それをなくす体重移動の仕方や、股関節の使い方などを野村コーチに一から教えていただきました。本当に細かく教えてもらって、少しずつ感覚をつかめるようになりました」
─野村コーチは髙投手から見てどんなコーチですか?
「本当に細かい指導をしてもらえました。一つひとつが『こうなっているからダメ』と指摘していただきました。本当に少しでもずれていたら気づかれます。たとえば僕が『少ししんどいな』と思いながらやっていると、すぐに見抜かれます(苦笑)。全ての動きに根拠が必要というか、動きのノウハウを知っておられるんだなと思いました。また、変化球に関してはいろいろと質問しました。僕が持っている球種で、野村コーチはどうやって投げていましたか? という感じです。今は野村コーチが見ている選手も増えてるみたいですが、僕の時はマンツーマンだったので、かなり丁寧に教えていただけてありがたかったです」
─その後、練習や二軍での試合も含め、効果を感じた瞬間はありましたか?
「失点はしたのですが、二軍の中日戦(7月15日・由宇練習場・5回3失点)で先発したときです。僕はこれまで、イニング数より多い三振を取ったことがありませんでした。この日は5回で6個取れて、ほとんどの三振がストレートで取れました。球速自体が以前より速くなったわけでもないのに、打者が空振りしていました。その時『ストレートはこういう感覚で、こういうイメージで投げるんだ』という感覚がつかめました」
─結果よりも『三振』が取れたことで手応えを感じられたんですね。
「野村コーチとのトレーニングで、“打てないストレート”にしようということも目的の一つでした。それを明らかに結果として感じることができました。もう一つは、フレッシュオールスター(7月20日・4番手で登板)です。1イニングの登板でしたが、三振を取ることができました。この日は『少し強く腕を振って、出力を上げてみよう』と思ってトライしたのですが、『これを先発でできたら……』という感覚になりました。この2試合は僕にとって大きかったかなと思います」
─8月1日に一軍昇格が決まったときの心境はいかがでしたか?
「7月26日に二軍登板後に『一軍に行くよ』と言われて、正直びっくりしました。野村コーチに教えてもらってから、まだ5イニングしか二軍で投げていなかったので『大丈夫かな?』という不安の方が大きかったですね」
─8月1日に一軍初先発となりました。どのような心境でしたか?
「やるしかないと思いました。変なことを考えても仕方ないなと思ってからは、マウンドで吹っ切れたというか、1イニング、1イニング投げるなかで、逆に何も考えなかったことが、良い投球につながったのかなと思います」
(後編へ続く)

