1993年の創刊以来、カープ、サンフレッチェを中心に「広島のアスリートたちの今」を伝えてきた『広島アスリートマガジン』は、2025年12月をもって休刊いたします。32年間の歴史を改めて振り返るべく、バックナンバーの中から、編集部が選ぶ“今、改めて読みたい”記事をセレクト。時代を超えて響く言葉や視点をお届けします。

 第6回目の特集は、カープの輝かしい3連覇を振り返る。リーグ優勝、そして連覇を支えた選手たちのインタビューをセレクション。

 これまで9回のリーグ優勝と、3回の日本一に輝いているカープ。なかでも25年ぶりの優勝を果たした2016年からの3連覇は輝かしい記録として、今なおファンの記憶に深く刻まれている。ここでは、広島アスリートマガジンで過去に掲載してきた『3連覇を支えた選手・首脳陣インタビュー』を改めて振り返る。

 今回は、2015年に得点力不足に泣いたカープ打線を、リーグナンバーワンの破壊力を誇る強力打線へと生まれ変わらせた2016年当時の打撃コーチ・石井琢朗氏のインタビューを再編集してお届けする。打撃陣の意識改革を遂行した石井コーチが、25年ぶりのリーグ優勝に湧いた2016年のカープ野手陣を語った内容とは。(広島アスリートマガジン2016年10月号掲載記事を再編集)

現役引退後、2013〜2017年までカープでコーチを務めた石井琢朗氏

◆意識は守備目線での攻撃

— 2015年シーズン、打線は得点力不足に泣きました。昨季、守備走塁コーチという立場からどのように分析されていましたか?

「攻撃というのはどうしても打つ方に目がいってしまいがちなんですが、打撃と走塁を含めて点を取れることだと思っています。昨季は打つ打たないという部分だけではなく、走塁面も含めての得点力不足だったのではないかと思っています。僕も昨季は走塁面を担当していたので、そういった意味でも責任を感じています」

— 昨季オフに一軍打撃コーチに就任された訳ですが、どのような思いで打撃コーチに臨まれたのでしょうか。

「守備を担当していたときも感じていたのですが、守備と攻撃というのは表裏一体だと思っています。攻撃のときは守備のことを考える、守備のときは攻撃側のことと守備体系などを考えながら守るということを考えていました。得点力不足だとしても、打つだけじゃないと僕は考えていますし、攻撃というのは守りからのリズムでつくるものだったりもします。あまりに打つということだけに固執した考えではなく、もう少し全体的に視野を広げるべきだと考えていました。それらが頭にあったなかで今季から肩書が打撃コーチになりましたが、見方としては守備側からの目線での攻撃です。どういう攻撃なら得点が上がっていくかと考えていました」

— 秋季キャンプから打撃コーチとしての指導がスタートしました。どのような部分から取りかかろうと考えていたのですか?

「打撃だけは教えられないと今でも思っているんですが、打撃って形がないんです。打撃論はそれぞれあると思うんですが、人それぞれ違いがあるので打撃だけは教えるのは難しいと感じています。僕自身がある程度自分の感覚でやってきたというのがあるので。技術どうこうではなく、とにかく意識から入っていこう、意識を変えようと思って指導に入りました」

— 石井コーチの考える〝意識〟とはどのようなものなのですか?

「僕は〝意思のないところに形はできない〟と思っているので、形から入る前に、どういう意識を持ったらその形ができるのか? ということを大事にしています。正直、理論や理屈は後づけで構わないんです。まず、「こうするにはどうしたらいいか?」という意識づけから入って、そこから選手が一生懸命練習をして、自然とそれなりの形ができてくると思っています」