カープを実況し続けて20年。広島アスリートマガジンでも『⾚ヘル注⽬の男たち』を連載中の坂上俊次⽒(中国放送アナウンサー)による完全書き下ろしコラムを掲載! ⻑年カープを取材してきた坂上⽒が、カープの育成⽅法、そして脈々と受け継がれるカープ野球の真髄を解き明かします。連載6 回⽬の今回は、球界随⼀のノッカーとして知られる⽟⽊朋孝⼆軍守備・⾛塁コーチの考えに迫ります。

 

 その技術は12球団トップクラスだ。鍛錬を⽋かさぬ体から放たれるノックの打球は、変幻⾃在である。強弱、正確さ、それだけではない。ボールの回転にすらも意識を払っていうのだから驚きである。

 「スライスの打球、ボテボテの打球、ドライブ回転の打球・・・そういうことは意識しながら打つようにしています」

 カープの3 連覇の⼟台になった鉄壁の内野守備を構築した男が、⽟⽊朋孝(現⼆軍内野守備・⾛塁コーチ)である。2015年から2018年まで⼀軍内野守備・⾛塁コーチとして卓越したノック技術で、チームを⽀えた。⽥中広輔や菊池涼介らの円熟の選⼿をアシストした『職⼈のノック」。そのレシピには、まだまだ『隠し味」があった。

 「キャンプでは、⾜を使う打球を多く打ち、しっかりとした⼟台をつくります。それからシーズンを迎えます。そして梅⾬があり、夏を迎えます。疲れが⾒え始める時期には、ノックで左右に振ることを減らします」

 選⼿の技術に全幅の信頼を寄せるからこそ、⽟⽊は、頭に刻まれたカレンダーに基づいて、打つべきノックのプログラムを構築していく。昨季から⼆軍の守備・⾛塁コーチになった⽟⽊だが、今季異例のシーズンを迎えるにあたり、プログラムの更新を余儀なくされた。

 「今年は、新型コロナウィルスの影響もあり、グラウンドが使えない時期がありました。キャンプでやってきたことも、⼀回リセットされることになってしまいます。5⽉頃に、グランドを使っての練習が再開となりましたが、もう⼀度、⾜を使ってもらうことを意識しました」