今季からカープの一軍投手コーチに就任した石井弘寿氏。現役時代はヤクルトで豪速球を武器とする左腕リリーバーとして活躍し、最優秀中継ぎのタイトルなどを獲得。2004年のアテネ五輪では日本代表としても活躍した。現役引退翌年の2012から昨季まではヤクルトで投手コーチを歴任するなど、長い指導歴を誇る。

 ここでは、主にブルペン担当コーチとして一軍投手陣を支える石井コーチの選手育成、指導論に迫っていく。(全2回/第1回)

現役時代は中継ぎとして活躍。今季からカープ一軍投手コーチに就任した石井弘寿コーチ

外から見たカープと、内から見たカープ

—2025年シーズンからカープの一軍投手コーチに就任されました。新しい環境で感じた印象を教えてください。

 「30年間ヤクルト一筋でしたから、最初は不安もありました。一緒にやってきた人もいなくなりますし、環境が大きく変わりますからね。ただ、毎日が本当に新鮮で楽しいですし、情熱を持って取り組めています。広島という街には現役時代から遠征で何度も来ていましたが、実際に生活してみると、改めてカープが街に根付いていることを感じます。みなさん本当にカープを愛しているんだと感じますね」

—改めて、カープでのコーチ就任を決断した理由を聞かせてください。

 「まさかこの年齢で他球団に行くことになるとは思っていませんでした。お話をいただいてからは、いろいろな方に相談しましたし、ヤクルト前監督であり広島出身の高津臣吾さんにも話を聞いていただきました。その中で新井(貴浩)監督ともお話しする機会があり、『優勝したい』という強い思いを感じました。なんとか新井監督を胴上げしたい。その気持ちが大きな決め手になりました」

—外から見ていたカープと、実際に中に入って感じた印象はいかがですか?

 「もともと先発投手陣は非常に良いチームだと思っていました。柱となる投手がいますし、リリーフにも力のある投手がいる。良い投手陣だなという印象でした。秋季キャンプから本格的に選手を見させてもらいましたが、若い投手にも力を感じました。一軍で見たことのない投手もいましたが、『こういう選手たちが成長していけば面白いな』と思いました」

—先発転向した栗林投手は結果を残しています。どのように見ていますか?

 「もともと持っているポテンシャルは非常に高い投手だと思っていました。抑えと先発では求められるものが全く違います。抑えは一球一球が勝負球になりますが、先発はイニングや球数も考えながら組み立てなければいけません。その中でどう順応していくか見ていましたが、序盤から非常に良い投球で先発陣を引っ張ってくれたと思います」

—実際に栗林投手をコーチとして見て、どのような印象を持たれていますか?

 「正直、驚きましたね。これまでキャッチボールでたくさんの投手の球を受けてきましたが、栗林の球を受けた時に『これはちょっと捕れないな……』と思いました。ヤクルト時代も含めて、一番良い投手だなと感じたくらいです。ストレート、カットボール、スライダー、カーブ、フォーク。どの球種も一級品です。すべての球種でカウントが取れますし、勝負球にもなる。さらに、それをしっかりコントロールしてゾーンに投げ込める。そこが栗林の大きな強みですね」

—具体的にはどんな部分に凄みを感じるのでしょうか?

 「まずストレートに強さと勢いがあります。変化球も素晴らしいですね。良い投手は球が曲がる時、落ちる時に球速が落ちません。むしろ加速して見えるんです。栗林の球にはそれがあります。回転数も非常に多いですし、打者にとっては嫌な投手だと思います。実際にボールを受けることで、テレビやベンチから見ているだけでは分からない部分も見えてきますからね。そういった感覚も指導に活かしています」

(後編へ続く)

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