2023年シーズンにカープに復帰し、指導者として多くの若鯉を鍛え上げてきた福地寿樹コーチ。現役時代には二度の盗塁王に輝き、指導者としては2025年シーズンの中村奨成の飛躍を支えた。2026年には一軍打撃チーフコーチに就任し、日々選手たちと向き合っている福地コーチが、ヤクルト、カープでの指導歴から印象的な選手を振り返る。(全3回/第3回)
◆ムードメーカーの存在は重要。選手から発することに意味がある
―選手には『妥協をしないこと』『見ている人は見ていること』を伝えるそうですが、福地コーチ自身も現役時代にそれを経験されたわけですね。
「僕も崖っぷちの経験をしていますからね。移籍をしたらキャンプ初日から勝負なんです。『福地ってどんな選手?』という評価で初日から始まります。そこで手を抜かず黙々とやっていたら、『こうやって練習する選手なんだ』と見てもらえる。試合で結果を出せば、また評価も変わる。だから、諦めかけている選手には『もったいない、まだできるよ』と言いたいんです」
―意識の持ち方は大事なのですね。
「メンタル的にへこたれる選手もいますし、まだ成長途中の選手もいますからね」
―ヤクルトとカープ、両球団でコーチを歴任されてきましたが、共通する部分はありますか?
「両チームとも選手同士の仲が良いことですかね。昔みたいに派閥があって『どっちにつくんだ』みたいな感じはあまりないです(苦笑)。ただ、仲が良いチームは、成績が悪くなるとみんな一緒に暗くなることもあります。メリットもデメリットもあります」
―そんな時にはどのようなことが大切になるのでしょうか。
「チームには数人、良い意味でバカになれるというか、大騒ぎできる盛り上げ役がいるものです。暗い空気の中でも、その選手に引っ張られて、みんなが少しずつ明るくなる。技術以外の部分となりますけど、そういう選手はすごく大事な存在です」
―これまで指導されてきた中で、雰囲気を変える選手はいたのでしょうか。
「ヤクルト時代、村上宗隆(現・ホワイトソックス)は若いのにキャプテンシーが強かったですし、『やりましょう、僕ら』みたいな感じがすごくありました。青木宣親もそうですし、外国人ではバレンティンみたいなラテン系の明るさもあった。負けていても、そういう選手がいると空気が変わるんですよね」
―連敗している時ほど、ムードメーカーの存在は大きいですね。
「大きいです。どこで空気を変えられるか。雰囲気というのは本当に大事です」
―コーチ側から、そういう選手に『盛り上げてくれ』と促すこともあるのですか?
「ありますね。僕らが『行こうぜ』と言うのとはまた違うんですよ。選手から出る空気の方が自然ですから。ロッカーで試合前に笑い声が出ていたりすると、『ちょっと空気変わったな』と思うこともあります」
―日々選手を見ている中で、成長を感じる瞬間はどんな時ですか。
「やっぱり、今までできなかったことができるようになった時ですね。練習ではできていても、試合になるとできないこともあります。それが試合でできるようになったり、以前なら迷っていた場面で、自分で判断してプレーできるようになったり。そういう姿を見ると、成長したなと思います」
―最後にこれからのカープを担う選手たちに期待することを教えてください。
「やっぱり、妥協せずにやってほしいですね。『今日はこれで良いかな』ではなく、もう一歩、もう一球、もう一振りとやっていく。その積み重ねが自分の力になりますから。失敗を恐れずにどんどん挑戦してほしいです」
■福地寿樹(ふくち・かずき)
1975年12月17日生
1993年ドラフト4位で広島に入団。俊足を武器に活躍し、ヤクルト時代の2008年に盗塁王を獲得。2012年に現役引退。引退後はヤクルトで長年コーチを務め、2023年からは広島二軍コーチを歴任。2026年から一軍打撃チーフコーチ。
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