11月3日、2027年度のカープコーチングスタッフが発表された。新たにコーチに就任した田中広輔氏は、現役時代、主に「1番・ショート」としてチームをけん引し、リーグ3連覇にも大きく貢献した選手の一人だ。不動のリードオフマンとして、常にチームの先頭に立って戦い続けた田中氏。今回は、現役引退直後に語っていたファンへの思いや、若手選手に伝えたいことを再編集してお届けする。(全2回/第2回)
◆どんな状況でも声援に応えるのがプロ
─2019年以降は膝の手術や故障などがあり、苦しいシーズンが続きました。この数年は、野球選手としてどんな期間でしたか?
「苦しい期間が続いたというか、僕の場合は、それが後半に来たというだけだと思っています。やはりプロに入って最初から出鼻をくじかれて、そこから活躍する選手もいれば、最初から最後までケガで終わってしまう方もいます。僕の場合はありがたいことに最初に良い結果が出て、あとにその時期が来たという感覚なのかなと思っています。ちょうど良いと言うか、しなくてもいい経験ではあるのですが、野球人として、人として、いろんな意味で良い経験をしたかなとは思っています」
─若手と接する機会が多くなったことで、新たに気づかされたこと、学んだことはありますか?
「伝え方ですかね。僕が思っていることを感覚で言っても、やっぱり僕の感覚であって、特に経験をまだしてきていない選手には、できないことがたくさんある中で、それをどうやって伝えたらいいかというのを考えながら、言葉も選びながらやっていましたね。『昔は』とか『やっぱり今は』『俺らの時は』というのは、死語なわけで、そういうことはなるべく言わないように心がけていました」
─主力として3連覇を達成した経験というのは、野球選手としてどんな意味を持つ経験だったと思いますか?
「一生懸命みんなでやってきて、努力してきたことが間違いではなかったという証明ができた。そういう努力がチームとして報われた瞬間なので、学んだというかやってきたことが少なからずは間違っていなかったんだなという自信を得ることができた瞬間でした。また勝ちを知ると、最低のラインがやはり上がります。だから若い選手には知ってほしいというのはもちろんあります。取り組み方が本当に変わると思います」
─これまでさまざまな素晴らしい記録を残されてきましたが、635試合連続フルイニング出場という記録についてはどんな気持ちを持たれていますか?
「辛い事はありましたけど、レギュラーは試合に出て当たり前、最後まで試合を完結させる、そこまでがレギュラーという考えがあったので、それに対して大変なのは当たり前という感情ですかね」
─カープファンのみなさんはどんな存在であったか、聞かせてください。
「本当に毎回『頑張らなければ、結果を出さなければ』と思わせてくれる存在でした。スタンドを埋めて声援をもらっている中で、いかに喜んでもらうかというのは必須条件かなと思います。そのために必死に練習をしました。負けてしまったり、結果が出ないと、応援に来てもらえません。でもそれが全てなので、やはり若い選手たちも何かを感じてくれないと。当たり前じゃないですし、今シーズンの後半は、スタジアムの風景を見て僕も悲しかったですもんね。コロナ禍より少ないんじゃないのかなと思っていました」
─満員の時を経験されているだけあり、やっぱり寂しさを感じられていたんですね。
「これがプロ野球じゃないぞっていうのは感じてほしいですね。満員の声援の中で一喜一憂しながらやる、どんな状況でもそれに応えるのがプロです。頑張れた要因をつくってくれたのはファンのみなさんなので、感謝しています」
■田中広輔(たなか こうすけ)
1989年7月3日生、神奈川県出身
東海大相模高ー東海大ーJR東日本を経て、2013年ドラフト3位でカープに入団
高い出塁能力と堅実な守備でチームを支え、「1番・ショート」として2016年からの3連覇に貢献。2017年に盗塁王、最高出塁率、2018年にゴールデン・グラブ賞を受賞。3年連続フルイニング出場も果たした。2025年限りで現役引退。2027年度より、二軍内野守備・走塁コーチに就任する。
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