2016年、25年ぶりのリーグ優勝を果たしたカープ。その強さを支えた要素の一つが、選手一人ひとりが役割を果たし、つなぐ意識を持って戦った打線だった。

 当時、打撃コーチを務めていた石井琢朗氏(現・巨人巡回打撃コーチ)は、選手たちとどのように向き合い、何を伝えていたのか。今回は、石井氏が当時のインタビューで語っていた打撃への考え方や、選手の意識に対する思いを振り返る。25年ぶりのリーグ優勝に沸いた2016年、石井氏の言葉から当時のカープをひもとく。

(『広島アスリートマガジン』2016年10月号掲載記事を再編集)

2013〜2017年までカープでコーチを務めた石井琢朗氏。現在は巨人の巡回打撃コーチを務めている
2013〜2017年までカープでコーチを務めた石井琢朗氏。現在は巨人の巡回打撃コーチを務めている

◆「とにかく意識から入っていこう」

— 昨シーズン(2015年シーズン)オフに一軍打撃コーチに就任された訳ですが、どのような思いで打撃コーチに臨まれたのでしょうか。

「守備を担当していたときも感じていたのですが、守備と攻撃というのは表裏一体だと思っています。攻撃のときは守備のことを考える、守備のときは攻撃側のことと守備体系などを考えながら守るということを考えていました。得点力不足だとしても、打つだけじゃないと僕は考えていますし、攻撃というのは守りからのリズムでつくるものだったりもします。あまりに打つということだけに固執した考えではなく、もう少し全体的に視野を広げるべきだと考えていました。それらが頭にあったなかで今季から肩書が打撃コーチになりましたが、見方としては守備側からの目線での攻撃です。どういう攻撃なら得点が上がっていくかと考えていました」

— 秋季キャンプから打撃コーチとしての指導がスタートしました。どのような部分から取りかかろうと考えていたのですか?

「打撃だけは教えられないと今でも思っているんですが、打撃って形がないんです。打撃論はそれぞれあると思うんですが、人それぞれ違いがあるので打撃だけは教えるのは難しいと感じています。僕自身がある程度自分の感覚でやってきたというのがあるので。技術どうこうではなく、とにかく意識から入っていこう、『意識を変えよう』と思って指導に入りました」

— 石井コーチの考える〝意識〟とはどのようなものなのですか?

「僕は〝意思のないところに形はできない〟と思っているので、形から入る前に、どういう意識を持ったらその形ができるのか? ということを大事にしています。正直、理論や理屈は後づけで構わないんです。まず、『こうするにはどうしたらいいか?』という意識づけから入って、そこから選手が一生懸命練習をして、自然とそれなりの形ができてくると思っています」

— 根本的な考え方を変えていったということですか。

「たとえば〝この試合は残塁数が多かった〟と言われることもありますが、選手たちには『そこはとにかく気にするな。それで勝ち負けが決まる訳じゃない。得点圏打率が良いから、打率が良いから試合が決まる訳じゃない。悪いなかでノーヒットでも相手より1点でも多く点を取ったら勝ちなんだ』ということを言っています。同じ凡打でも、〝ランナー二塁で右に転がす〟という意識で、一つでもランナーを進めることができれば得点の確率が上がります。得点できなかったチャンスの数を数えるのではなく、〝得点できるチャンスを数多くつくる〟ことで、得点の確率は上がりますから。気持ちというか、意識があることでの積み重ねだと思います。あとは、絶対にシーズンのなかで好不調の波があるので、そのなかでも波を小さくしていくにはどうしたらいいのかを考えていました」

— 好不調の波を小さくするため、具体的にはどのような考えだったのですか?

「個人的な考えでもありますが、たとえば『4タコで終わるくらいであれば、最後の打席で四球を取って3タコで終わる』と思うことです。凡打で打率は落ちているかもしれませんが、出塁率からすると.250上がります。そういう積み重ねが長いシーズンのなかで波を小さくすることにつながっていきます。それを一人ひとりが心がけていくとチームの波が、そんなに落ちることはない訳です。おそらく今季は開幕から打線の波はそんなにないと感じています。長いシーズン、点を取れる取れないということはありますが、個人の波の大きさというのはないと感じています。たまに調子が落ちる選手もいましたが、他の選手が不調の選手をうまくカバーしていました。それだけに打線が全体的に落ち込むことは、今季はなかったと思います」

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