“ドラフト巧者・広島”。ここ数年のカープのドラフト1位指名を見ていると、その言葉がぴったりくる結果が残っている。

 2019年は森下暢仁、2020年は栗林良史と、競合必至と言われた即戦力投手を、2年連続で一本釣りで獲得。これはカープのドラフト戦略が見事にはまった結果と言えるだろう。

1年目から1点台の防御率をマークし、新人王を受賞した野村祐輔投手。

 カープが即戦力投手の一本釣りに成功した年を振り返ると、2011年のプロ野球ドラフト会議も印象深い。投手では「大学ビッグ3」と呼ばれた藤岡貴裕(東洋大)、菅野智之(東海大)、野村祐輔(明治大)、野手では、高校生の高橋周平(東海大甲府)に注目が集まった年だ。

 この年、カープが1位での獲得を目論んでいたのは、明治大の野村祐輔だった。岡山県倉敷出身。広島・広陵高のエースとして活躍し、3年の時に出場した夏の甲子園大会で準優勝。明治大でも4年通算で史上7人目となる30勝300奪三振を達成した右腕の1位指名を早い段階から公言していた。

 そして迎えたドラフト当日。競合は避けられないと予想されていたが、1位指名を公言する戦略が功を奏したのか、他球団から野村の1位指名はなく、一本釣りでゴールデンルーキーの獲得に成功した。

 「指名されたときはうれしかったですね。自分の名前が呼ばれてホッとしました。(広島のイメージは)やっぱり人が温かいイメージがありますね。甲子園で負けて帰ってきたときも、広島駅ですごくたくさんの方々が自分たちを出迎えてくれましたし、暖かく見守ってくださっていたと感じました」

 プロ入り後の野村の活躍はみなさんもご存知の通り。プロ1年目から開幕ローテに入ると、9勝を挙げ、防御率1.98の安定した成績を残し、球団史上8人目となる新人王を獲得。円熟味を増したプロ5年目の2016年には、16勝をあげ最多勝と最高勝率のタイトルを受賞。ベストナインにも選出され、リーグ優勝の大きな原動力となった。

 高校時代から広島と“縁のある”即戦力右腕を一本釣りで獲得した2011年のドラフト会議。この年、2位で指名したのは、菊池涼介(中京学院大)。いまもなおチームを支える投打の主力を獲得した会心のドラフトとなった。