11月11日に2020年シーズンの全日程を終えたカープ。6月の開幕から苦戦が続いた今季は、52勝56敗12分の5位に終わった。はたしてチームが低迷した要因は、どこにあったのだろうか。ここでは厳しい戦いが続いた今季を、カープOBの大野豊氏が総括する。

9月に右肘の手術を受けた大瀬良大地投手。早期の復活を期し、現在はリハビリ調整を続けている。

◆森下暢仁はこれまでの大卒投手の中でもトップクラス

 前回に引き続き、今回も2020年のカープのペナントレースを振り返っていきたいと思います。リリーフ陣についてはすでに触れましたので、今回は先発投手陣に絞って話を進めていきましょう。

 先発に関しては開幕前から頭数は揃っていましたよね。ただ想像以上に想定外だったのが、K.ジョンソンの不調です。勝ち星を計算できる投手が、終わってみればまさかの0勝。チーム防御率(4.06/リーグ5位)を見ても分かるように、先発陣の不振もチーム低迷の要因となってしまいました。

 その穴を埋めるべき存在である大瀬良や野村も、シーズン途中で故障により離脱。エース格の投手が次々に抜けたことを思えば、5位という結果も致し方ないのかもしれません。

 ただ、終わり良ければ全て良しではありませんが、シーズン終盤になって先発陣がしっかりと試合をつくれるようになったことは大きいと思います。中盤戦までは初回に失点するケースが目立ちましたが、ゲームの入りで崩れなくなったことで勝ち星も増えていきましたよね。

全ての先発投手に言えることですが、初回の入りは非常に重要です。来季はこれまで以上に1球目から集中力をもって臨んでほしいですね。

 その意味では18試合を投げて、ほとんど試合を崩さなかった森下は、1年目でありながら安定感がずば抜けていました。投手としての資質を全て持ち合わせていると言いますか、ピンチにも動じないですしメンタルの強さに加えて自分の球に自信があるのでしょう。

 スピードがある投手は変化球が悪いとか何かしら欠点もあることが多いですが、彼の場合は制球力、変化球も一級品です。すでにエース級の投球をしていますし、年齢など関係なく周りの投手は彼にアドバイスを求めたり、技術を取り入れるということをやっても良いと思いますね。

それくらいのものを今季は見せてくれましたし、間違いなくこれまでの大卒投手の中でもトップクラスの投手と言えるでしょう。来季に向けても期待大です。