佐々岡カープ元年、主力選手が故障などで苦しむ姿が目立つ中で、多くの若手選手が躍動した。ここでは「初」をキーワードに2020年シーズンの佐々岡カープで生まれた記録を振り返っていく。
 今回は2年目の大盛穂が初打席に立った7月24日のDeNA戦(横浜スタジアム)を振り返る。

7月24日のDeNA戦でプロ初打席を経験した大盛穂選手。惜しくもプロ初安打とはならなかったが、期待を背負う育成の星がプロのスタートを切った。

◆育成からわずか1年で支配下登録。必死のアピールでつかみとった一軍の舞台

 育成選手として迎えたプロ1年目の2019年。カープの大盛穂は、スピードを武器に、二軍でチームトップの109試合に出場し、75安打・16盗塁をマーク。その活躍が認められ、11月に念願の支配下登録を勝ち取り、背番号も124から59へと変わった。

 そして迎えた2年目の今シーズン。開幕は二軍で迎えるも、課題の打撃で首脳陣に猛アピール。二軍で3割を超える打率を記録し、7月24日の念願の一軍昇格を果たした。

「昇格を言われたときは『とうとう、きたか』という思いになりましたし、とてもうれしい気持ちでしたね。プロに入ってから一番はバッティングが良くなったと思っています。ちなみに体的にはオフシーズンに10キロ近く増えました」

 7月24日は横浜スタジアムでのDeNA戦。一軍メンバーに初めて名を連ねた試合は、先発した大瀬良大地が2回で緊急降板。アクシデントと共に幕開けした試合は、序盤から安打が飛び交い、打撃戦の様相となった。

 5回を終わって2対3でDeNAがリード。迎えた6回の攻撃、ピレラの左中間への2ランで逆転に成功した。そして、2死から田中広輔が安打を放ったところで「代打・大盛」が告げられた。

 初対戦の相手は上茶谷大河。初球の変化球を見逃し1ボールからの2球目。外角低めのボールを打つと打球は上茶谷のもとに。ようやく手にしたプロ初打席は投ゴロに終わり、快音は響かなかった。

「(初打席は)バッターボックスに立っている自分の足が浮いているかのような気持ちでしたし、めちゃくちゃ緊張していました」

 試合は9回にDeNAに一挙5点を奪われ、逆転サヨナラ負け。デビュー戦は勝利に貢献できずに終わった。しかし2日後の7月26日のDeNA戦(横浜スタジアム)で、再び代打で登場すると、自慢の快速を飛ばして内野安打でプロ初安打を記録。プロ2打席目でHランプを灯し、チームに勢いをもたらした。

 昇格してすぐに初打席を経験し、同一カードで初安打を記録した大盛は、以降、代打や代走、守備固めと出場機会が増えていった。当時の心境を、こう振り返っている。

「今は、代打からの守備だとか、代走からの守備など、途中出場という立場なので、まずは当たり前のことをしっかり当たり前にすることを心がけています。首脳陣の方から『こいつはやることをしっかりやるな』という印象を持ってもらえるようなプレーをどんどん見せることができたら良いなと思っています」

 その後、走攻守、すべてにアピールを見せた大盛は、スタメンも数多く経験するなど、激戦区の外野ポジションで存在感を発揮。プロ2年目でつかみとった一軍の舞台で、大きな成長を遂げた。