佐々岡カープ元年、主力選手が故障などで苦しむ姿が目立つ中で、多くの若手選手が躍動した。ここでは「初」をキーワードに2020年シーズンの佐々岡カープで生まれた記録を振り返っていく。

 今回は、高卒2年目のスラッガー・林晃汰がプロ初安打を放った10月9日のヤクルト戦(マツダスタジアム)を振り返る。

10月9日のヤクルト戦。高卒2年目の林晃汰選手がライト線へ二塁打。プロ8打席目で待望の初安打を放った。

◆「やっと出た」待望のプロ初安打は技ありの長打!

 高卒でありながら、プロ1年目から二軍の4番として試合出場を続け、7本塁打をマークした、将来のカープの4番候補・林晃汰。強豪・智弁和歌山高出身の背番号44は、プロ入団と同時にその成長スピードを加速させ、周囲の期待に応える順調な歩みをみせた。

 そして迎えた2年目の今シーズン。コロナ禍で調整が難しいと言われた時期も、やるべきことを着実にこなし、レベルアップをはかった。ウエスタン・リーグ開幕後は、昨年と同じように4番を任され、シーズン序盤からパワフルな打撃を展開。一時はリーグトップとなる本塁打をマークするなど、安打、本塁打、打点など主要な打撃部門で上位にランクインする活躍をみせた。

「調子が悪くても、ヒットを打てる試合が増えているので、その点は良いと思っています。また、打席内での気持ちの切り替えがうまくできるようになってきました。結果が出ないときは、いろいろなことを変えて試すことができるチャンスだと思って、思い切って大胆に打撃を変えるときもあります」

 二軍で結果を出し、成長を続ける林のもとに吉報が届いたのは10月2日。プロ2年目で初の一軍昇格を果たした。翌10月3日にプロ初打席。この日2度の打席機会が与えられ、10月6日の阪神戦(マツダスタジアム)ではプロ初のスタメンで起用されるなど、首脳陣の期待の高さが感じられた。

 そして迎えた10月9日のヤクルト戦。この日は代打で出番が巡ってきた。8回、先頭打者として打席に入ると、今季セットアッパーに成長した清水昇からライト線へ二塁打。2ストライクと追い込まれてからの変化球を、巧みなバットコントロールでとらえ、プロ8打席目で待望のプロ初安打を記録した。

「(初安打は)やっと出たなと。うれしかったですし、ボールは両親に渡しました。ただ、一軍の投手と対戦してみて、まだまだだと感じることしかありませんでした。今は強いスイングをすることを大事にしていて、それがいつでもできるような打ち方を意識しています」

 この打席を最後に林は再び二軍へ。わずか11日のみの一軍生活となったが、一軍投手のレベルの高さを肌で実感できたことは、林にとって大きな収穫になったはずだ。

「一打席を無駄にしたくないと強く思うようになりましたし、より強い気持ちを持って打席に入らなければと思うようになりました」

 飛躍が期待される3年目の来シーズン、林にとっては勝負の一年となる。今季の経験を糧に鍛錬を重ね、来季こそは、林の魅力である“本塁打・打点”の打撃成績に、数字が刻まれることを期待したい。