◆自分を変えるために新井に弟子入り

 この5年間、闇雲に日常を過ごし、流れに身を任していたわけではない。堂林は現状を打破するためにもがき続けた。2016年オフには当時チームの精神的支柱として君臨していた新井貴浩への弟子入りを志願した。

「食事に連れて行っていただく機会があって、『このままだと、これで終わるぞ。何かを変えないと変わらない』ということをハッキリと言われました。そしてその場で『オフに打撃を教えてください。護摩行にも連れていってください』とお願いしました」

 新井は、打撃のアドバイスには関しては承諾したものの、護摩行に関しては「これをやったからといって野球は上手くならない」と断った。ただ、堂林の“変わりたい”気持ちが新井の心を動かし、2017年1月11日に新井と共に、初の護摩行に挑んだ。

「僕自身『どうなってもいいから変わりたい』という気持ちがありました。実際に(2017年に初めて)護摩行を体験し、人生で一番キツかったです。少しでも気を抜けば気を失ってしまいそうになるので、気持ちに隙をつくれませんでした。ただ、あれだけキツいことを乗り越えることができたので、他のことがすごく小さく感じますし、すごく前向きになれるというか、気持ちを良い方向に切り替えることができるようになりました。精神的にもたくましくなれたと思います」

 また、こだわってきたサードへの想いも吹っ切った。外野守備にも積極的に取り組むなど、試合に出るための可能性をガムシャラに追い求め続けた。

「サードとか言っている立場ではありませんし、試合に出るために、どこでも守れるようになろうと思っています。2016年のシーズンが終わってから、緒方監督から『まだサードでいくのか?』と言われましたが、『そういう考えはありません』とハッキリ言いました」

 

 緒方監督が指揮した5年間、シーズンを通しての一軍定着はならなかったが、この5年間の経験が、”プロ野球選手・堂林翔太”を支える土台をより強固にした。

 『乗り越えた壁はいつか自分を守る盾となる』

 堂林が掲げる座右の銘のごとく、ブレイクを果たした2012年には感じたこともなかった壁を一つ一つ、“自分を変える”勇気と共に乗り越えていった。

 そして2020年。プロ11年目となった今年、堂林はこの言葉通り、揺るがない盾を纏い、劇的な復活を遂げることになる。
(#5に続く)