2020年は堂林翔太“覚醒”のシーズンになったと言っても過言ではない。開幕序盤から安打を量産し、8年ぶりに規定打席に到達するなど、最後までレギュラーとして活躍。期待されながらも結果を残すことができなかった男が、プロ11年目で見事な復活劇を見せつけた。

 11年目の覚醒を見せファンを魅了した堂林翔太のこれまでの軌跡を、当時の本人の言葉とともに辿る。今回は、不振に喘ぐ堂林を一番近くで見守ってきた“2人の人物”の証言をもとに、覚醒の理由を紐解いていく。

2020年は6年ぶりの開幕スタメンを勝ち取った堂林翔太選手。序盤から快音を響かせ、カープ打線を牽引する活躍をみせた。

◆自分に合うものを見つけて貫き通せるか

「正直なところ、何度か自分でも腐りそうになるときはありましたけど……そこをずっと堪えて、諦めるということはなかったので、『何か良いことがある』と思いながらずっと練習を続けていました」

 2015年以降、堂林の一軍出場機会は激減したが、今季は6年ぶりの開幕スタメンを勝ち取るとカープ打線を牽引。序盤から継続して快音を響かせる堂林翔太の打撃に、自然と周囲の評価は上昇していった。

 この数年間、もがき続ける堂林を一番近くで見続けてきた“2人の人物”も、今シーズンに懸ける堂林の変化を感じていた。

 昨季まで長年二軍打撃コーチとして堂林の姿を見ていた朝山東洋一軍打撃コーチは、若手に交じり黙々と練習を続ける近年の堂林をこう見てきた。

「これまでの堂林は浮き沈みが激しい打者でした。でも今シーズンに関しては良い状態を持続できていて、起用してみたいと思わされます。結果を残せているのは、自分の打てる球をしっかり打って、ボール球を追いかけずに見逃せているからでしょう。あと、甘いストライクを簡単に見逃す傾向が以前からありましたが、今季に関しては、その甘い球もしっかり振っていけています。もがき続けている堂林をずっと見てきましたが、自分の中で殻を破らないといけません。いろんな人にアドバイスを受けているでしょうけど、最終的には自分に合うものをしっかり見つけてそれを貫き通せるか。そこだと思います」

 そしてもう1人、背番号7の苦しむ姿を見守ってきたのが、堂林が2016年オフに弟子入りし、護摩行を共にするなど師と仰ぐ新井貴浩氏だ。