◆戸惑いを感じていた新システムが、自信と確信に変わった今季初勝利

―今シーズンは監督が変わり、戦術も大きく変わりました。戸惑いや苦労されたこともあったのではないでしょうか?

「スキッベ監督が目指すスタイルは、前に激しく、どんどん守備でボールを奪いに行く『ゲーゲンプレス』というスタイルです。キャンプや開幕戦までは、『どこまで守備をしたら良いんだろう……』というのが正直な気持ちでしたし、自分が相手のどのポジションまで出ていけば良いのかが分からず戸惑いも感じていました。ただ、監督が合流してからは自分に求められている役割もはっきりしたので、そこからは『ゲーゲンプレス』という戦術が当たり前になりました。守備の部分に一番ギャップを感じていたのですが、そこさえうまくはまってしまえば、逆に試合を楽にこなせるようになりました」

―4月2日の湘南戦(◯0-1)で初勝利をあげてから、チームは波に乗れたように思います。あの試合は、今シーズンのターニングポイントになる一戦だったのではないでしょうか?

「それまでの神戸戦やFC東京戦では、『手応えはあるけれど結果が伴わない』という試合が続いていました。ただ、試合前半は苦しくても後半からはゲームを支配できているという感覚はあったので、あとは結果が出れば一気に良くなるだろうという予感もありました。実際にその通りで、湘南戦で苦しみながらも勝てたことで、チーム全員が自分たちのやっているサッカーに自信を持てるようになりました。『このサッカーで大丈夫なんだ』という確信を持つことができた試合だったと思います」

―湘南戦では、決勝点となった満田誠選手のゴールをアシストされました。藤井選手にとっても特別な試合になったのでは?

「今年はクロスの質を上げることを意識していたので、あのような形で結果が出たことはうれしかったです。クロスの入り方も繰り返しトレーニングをしていたので、それが実ったのもうれしかったですし、チームとしての練習の成果が出たとも感じました」

―クロスの質を上げるために、参考にしている選手はいますか?

「僕は、他の選手を見て真似のできるタイプじゃないんです。いまはとにかく、決めた場所にクロスを上げられるように練習を積み重ねているところです。誰かを参考にすることで逆に自分の感覚が狂ってしまうかもしれないので、あまり他の選手は見ていませんね」

 =後編へ続く=

《プロフィール》
藤井智也●ふじいともや
1998年12月4日生、岐阜県出身
173㎝・68kg/MF
長良高-立命館大-広島(2020〜)
縦への推進力にすぐれた広島のスピードスター。
2022年8月時点Jリーグ選手別スプリント回数ランキングで1・2位を独占。50m5秒台の俊足と、試合最終盤でも衰えないスタミナを武器に相手ゴールを狙う。