◆カープだけが初物に弱いわけではない

 この結果を総合すると、カープは確かに「初セーブ献上」では1位であり、他の項目でも比較的上位にいるが、突出して初物に弱いわけでもなく、各球団で大きな数の差は見受けられないということになる。

 むしろ、データが揃っていない“初物”に活躍されてしまうというのはどこの球団でもあることだ。見渡してみれば、中日・森繫和前監督の「中日は初物に弱いと言われているが……」(サンスポ・コム、2018年7月29日)という発言があったり、スポーツ紙に「巨人は“初物”に弱いといわれる」(スポニチアネックス、2008年7月20日)と書かれたりするなど、どこの球団も「うちは初物に弱い」と思っているのではないだろうか。

 それでも、カープファンが「カープは初物に弱い」と思ってしまうならば、よほど強烈な“初”が多い、ということなのかも知れない。例えばロメロ(中日)は初登板・初先発でカープを無失点に抑えて初勝利したし(2019年4月4日)、ロペス(巨人・現DeNA)や村上宗隆(ヤクルト)の初打席初本塁打を献上したのもカープである。こうした事態に出くわすと、ファンの頭には確かに「初物に弱い」という印象が刻まれてしまいがちである。

 しかし逆に見れば、カープの選手たちも他球団相手に“初”を記録しているわけである。今季、新入団のピレラは開幕戦(対DeNA・6月19日)で初安打、初本塁打を記録し、森下暢仁は6月28日の中日戦で9回に3点を失い降板したものの、8回まで「あわや完封か」という快投で初勝利を挙げた。勝ちパターンの一角を担うようになった塹江敦哉の初勝利(対DeNA・7月8日)、2年目の羽月隆太郎や育成出身の大盛穂の初安打も嬉しいものであった。さらに言うと、他球団に比べてカープは一軍に上がって“初〇〇”を記録した選手がまだ少ない。それは言い換えれば、これからの選手が多いということでもある。若鯉たちが今後“初”を達成していく姿が、今から楽しみで仕方がない。

今季“初〇〇”を達成したカープの選手たち

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オギリマサホ
1976年東京都出身。イラストレーターとして雑誌や書籍等の挿絵を手掛けるかたわら、2018年より文春オンライン「文春野球コラム」でカープ担当となり独自の視点のイラストコラムを発表。著書に『斜め下からカープ論』(文春文庫)がある。