テレビでの試合中継などで『打球速度』や『投球軸・回転数』などの数値を目にすることが多くなったのではないだろうか。昨今は、プロ野球の世界だけでなく、大学生以下のカテゴリの練習で取り入れているケースも出てきている。

 今回はいち早く流行をキャッチし、スポーツサイエンスを取り入れている中学硬式野球・ボーイズリーグ所属の『真岡ボーイズ』の測定を行うエイジェックスポーツサイエンスチームの担当者に話を伺った。

測定シーン

―まず初めに、スポーツサイエンスによる分析を、サービスとして提供するという点にあまりイメージがつかないのですが詳しく教えてください。

「私たちのサポートでは、選手のグラウンドでのパフォーマンスを測定するアナライザー、食育の面からサポートする管理栄養士、ケガなどの予防をサポートするトレーナーの3つの軸でサポートを行います。チームによって何を求めているのかが変わるので、チームによって詳細のサポート内容は様々です。真岡ボーイズの場合は2カ月に1度の測定で、練習の成果や伸ばすべきポイントの確認を行なっているので、アナライザーと管理栄養士によるサポートを行なっています」

―真岡ボーイズが行なっている分析にはどのような項目があるのでしょうか?

「アナライザーが行う内容では、精密機器を用いて『打球速度』『スイング速度』『送球速度』の3つを行います。管理栄養士のサポートでは、体重や身長だけでなく、体脂肪や骨格筋量を測り、シーズンに応じた食育指導も行い、成長期のアスリートにとって正しい食事の意識づけをしています」

『送球速度』の測定

―真岡ボーイズでは 2023年1月から測定を開始していると伺いました。どのような変化が見られるのでしょうか。

「昨年の1月から約1年を比較したのがこちらのグラフ(図1参照)です。灰色の線が打球速度、青色の線がスイングスピードです。夏場の疲労などで身体のキレが変わるので綺麗な右肩上がりとはなりませんが、1年での比較で2つの数値は両方とも10キロほど向上しました。相関性のある数値が上がっているという点では、選手の取り組み方が可視化されている良い例だと思います」

図1

―身体づくりの面ではどのような効果が得られているのでしょうか。

「こちらも身長、体重、骨格筋量の3つの数値が比例しているのがわかります。この数字なくして、前述のスイングスピードなどの数値は上がってこないのです。また、成長期の選手たちなので正しく身体を大きくして、正しい強度の練習をしないと選手生命に関わるケガにもつながりかねないので、これらの数値を確認する際にはより注意をしています」

変動グラフ
数値を確認する『真岡ボーイズ』のメンバー

―より効果的に練習の成果や正しいトレーニングの方向性を学ぶことができそうですが、まだまだ導入のハードルは高いように感じますがいかがでしょうか。

「そうですね。高校や大学であればチームや私立の学校では導入ができるケースは増えてきていますが、中学生年代のチームで一から機材を揃えるというのはハードルが高いかと思います。食育に関しては知識が必要なことなのでプロの意見を聞くことが大切ですが、スポーツサイエンスを練習に反映する手前で映像や数字を残すことも1つの手段だと思います。そうしてできることから始めていき、ステップアップしたいとなった時に私たちにご相談いただければと思っています」