◆「大野に投げさせてみるか」急遽決まった一軍初登板

 そこで古葉監督以下首脳陣としても「大野に投げさせてみるか」ということで、8回表から私は初めての一軍マウンドに上がったのである。

 この回、先頭の島野育夫さんにいきなりセンター前ヒットを打たれた。同級生である掛布雅之はショートフライに仕留めたが、続く田淵幸一さん、川藤幸三さん、佐野仙好さんに3連続ヒットを打たれ、片岡新之介さんにはレフトへ満塁ホームランを浴びた。あっという間の5失点。

 さらに中村勝広さん、山本和行さんに連続四球を与えたところで交代を告げられ、私の一軍初登板は30球で終わった。1アウトで自責点5だから、防御率は何と135.00。翌日の新聞には『天文学的数字!』と書かれたものだった。

 ベンチに戻ると先輩達が「次、頑張れよ」と声をかけてくれたのだが、私の耳には全く入らなかった。試合後、ロッカールームには後援会の方々が訪ねて来たが、私は「すいません、すいません」の他は、涙で言葉にならなかった。

 あまりの悔しさと情けなさで、自分の姿を誰にも見せまいと、私は球場から三篠にある寮まで、大通りではなく球場裏を流れる元安川の土手沿いを選んで歩いて帰った。

 翌日二軍行きとなったが、時間が経ってから考え直してみると、悲観する事は全くない事に気がついた。

 3年間硬式から離れていた自分が、他の新人より2ヵ月以上遅れて入団しながらも一軍のマウンドに立てたのだから、きちんと体づくりからやれば、必ず結果は出る。プロの強烈な洗礼を浴びたおかげで、「よし、もう一度頑張るぞ」という気持ちになる事ができた。

 シーズン終了後の秋季キャンプや米国フロリダ教育リーグでも、私は夢中になって野球に取り組んだ。

(第6回へ続く)

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