見事1年目から先発ローテの座を奪い、新人王を受賞した森下暢仁を筆頭に、若手の台頭が目立った2020年カープ投手陣。カープでの投手コーチ経験もあるOB・大野豊氏に2021年カープ先発陣の展望を語ってもらった。

新人王を受賞するなど文句なしのルーキーイヤーを過ごした森下暢仁投手。来季もチームの軸としての活躍が期待される。

◆2021年先発陣の柱はもちろん・・・

 2021年のカープを語る上で、今回は投手陣、中でも先発投手陣について触れていきたいと思います。

 やはり2021年の先発陣で軸となってほしいのは大瀬良大地です。もちろん2020年の勝ち頭である森下には大きな期待がありますが、1年目からシーズン通してフル回転しただけに目に見えない疲れも溜まっているはずです。また、あれだけ結果を残したのであれば、他球団も血眼になって攻略法を見つけてくるはずです。森下にしても結果を残したからといって、さらにレベルアップを目指していかなければなりません。

 私は現役時代、オフからキャンプの時期にかけて、毎年何かしらの変化球を覚えるなど新しいことに挑戦し、メディアを通じてそれを公表していました。その挑戦が実際にものになるかは別として、他球団の打者たちがその情報を見て少しでも警戒してくれればもうけものといった意識でした。そういう意味でも、プロ野球は現状維持では継続して結果を残せない世界だと思っています。

 森下で言えば、技術面はもちろんマウンドでの立ち居振る舞いも含めて非常に高いレベルのものを見せてくれましたが、来季はまだ2年目です。結果を残したとはいえ、オフの過ごし方等初めての経験がまだまだ多いわけですから、そこまで過度な期待を背負わせるのも考えものです。

 その点大瀬良はプロの世界である程度経験を積んできた投手ですし、来季に期する思いは人一倍強いはずです。私が現役だった頃は、“肘、肩にメスを入れたら野球人生は終わり”という固定観念がまだあった時代でした。今は決してそんなことはなく、手術から復活して素晴らしい投球をマウンドで見せてくれる投手が何人もいます。いちプロ野球OBとして純粋に喜ばしいことですし、大瀬良にしても手術、そしてリハビリを少しでも前向きに捉え、焦らずにトレーニングに励んでほしいと思います。

 もちろん先発としての実績ではNo.1とも言える野村祐輔や、今季活躍した九里亜蓮、そして随所で潜在能力の高さを見せつけた遠藤淳志など、他にも楽しみな先発投手もいます。さらにそこにルーキーの栗林良吏も加わるとなれば、良い形でチーム内での競争が見られそうな予感がします。

 森下が1年目から想像以上の活躍を見せたことは、先発投手陣にとって大きな刺激となったはずです。それだけに、上に名前が上がらなかったような若手投手がキャンプ初日から猛烈アピールをかけてくれるはずです。春期キャンプまでまだ1カ月ありますが、1日目から熱気のあるスタートとなることを期待しています。