カープを支える主力選手のルーキー時代を、当時のインタビューで語った言葉から振り返る本企画。今回は、2020年の先発ローテの軸として活躍した九里亜蓮を取り上げる。

 九里は1年目から開幕ローテに抜擢されるも、勝ち星から見放され、一軍と二軍を往復する日々が続いた。その過程のなかで育まれた、プロ野球選手としての心の成長をたどっていく。

2013年ドラフト2位でカープに入団した九里亜蓮投手。ルーキーながら開幕ローテに抜擢されると初登板で初勝利。1年目から一軍で白星をあげる活躍をみせた。

◆起こっていることは全てが必然だと思っています

 2013年ドラフト2位でカープに入団した九里亜蓮は、開幕2戦目の先発に抜擢されると、初登板初先発でプロ初勝利を記録。幸先の良いプロ野球人生のスタートをきった。

 しかし、それ以降は勝てない日々が続いた。シーズンも終盤、9月時点での成績は、2勝5敗。勝ち星から見放され、一軍と二軍の往復が続いていた。

「チームの勝ちに貢献できている試合は少ないと思うのでそういった意味では全然だめですね。ずっと勝てなかったことで、力でどうにかしてやろうとか思っていたときもあったんですけど、二軍に落ちたことでコーチから『お前の持ち味はなんなんだ?』、『自分はどんなタイプだ?』って自分のなかにある答えを引き出してもらったことで、意外と単純なことだったんだなと思えるようになりました」

 即戦力として期待されながらも結果を残せない日々。ただ、九里は現実をしっかりと受け止めて、プロの壁を乗り越えられるよう、しっかりと前を向き、持ち味である“ゾーンの中でボールを動かして勝負する”スタイルを飛躍させるべく鍛錬を重ねた。

「何事も起こっていることは全てが“必然”だと思うんです。偶然で起こることなんて人生ではないと思っています。だから、どんなことが起きても真っ正面で受け止めて、その壁にぶつかっていかないといけないです。野手が打たなかったからとか、ミスがあったからとか、そういうのを言い訳にしてやっていったら、成長しないと思います。それに、元々深く考えないタイプなので、それが良い方向にいっているのかもしれませんね」

 当時、カープに在籍していたバリントンとの出会いも九里にとっては大きな転機となった。

「大学時代はマエケン(前田健太)さんを参考にすることもありましたが、入団して感じたのは、僕はタイプ的に、マエケンさんよりもバリさん(バリントン)だなと思いました。だからバリさんの投球を見たりして、投球術だったり、どこを目がけて投げているというのはしっかり見るようにしています。バリさんからは『低めに投げる意識を忘れないように』というアドバイスをもらいました」

 ゾーンを広く使い、コーナーに低く投げ分けて打者を抑える。日本で通算45勝を挙げた実力派助っ人のマウンドさばきは、プロ1年目の九里にとっては、これ以上ない生きた教材だった。

 プロ1年目の九里が残した成績は、20試合に登板し2勝5敗、防御率4.00。この年入団した新人で、12球団一番乗りの白星を記録したものの、不完全燃焼で初めてのシーズンを終えた。しかし、そこで抱えた苦悩を“必然”と捉えた九里は、強い心と先輩投手から学んだ投球術を武器に、以降、コンスタントに成績を残し、一軍に欠かせない投手へと成長を果たしていく。