広島で始まるプロ野球人生。カープのユニフォームを纏った新人選手は、どんな思いでプロの第一歩を踏み出したのか・・。カープを支える主力選手のルーキー時代を振り返る本企画。今回取り上げるのは、カープ機動力野球を受け継ぐ存在として期待を集めた野間峻祥。初の開幕から1ヶ月経った時期に行った独占インタビューを振り返ると、当時の指揮官の言葉が、野間の一軍での疾走を後押ししていた。

2014年ドラフト1位でカープに入団した野間峻祥選手。この年の新人で唯一の開幕一軍を勝ち取ると、シーズンを通して一軍に帯同し経験を積んだ。

◆監督のアドバイスをきっかけに、思い切ってプレーできるようになりました

 2015年シーズン、ドラフト1位で入団した野間峻祥は、当時指揮をとっていた緒方孝市監督が惚れ込んだ逸材だ。走攻守の三拍子揃った大卒外野手は、期待の大きさから春季キャンプから一軍に同行。オープン戦初戦の試合では「1番・ライト」で起用され、プロ初の対外試合で名刺代わりのアーチをスタンドに叩き込んだ。

 そして開幕一軍メンバーに抜擢されると、開幕戦から代走として公式戦初出場。緒方監督が現役時代に付けていた背番号「37」を託された、機動力野球の新たなる後継者が、プロ野球選手としての第一歩を踏み出した。

「(開幕戦は)ナイターだったということもありますし、お客さんも多かったので、これまでと全然違う雰囲気でした。それで緊張をする、ということはありませんでしたが、公式戦ともなると特別な雰囲気を感じている自分がいました」

 その2日後の開幕3戦目。カープに電撃復帰した黒田博樹の復帰戦として注目を集めた試合で、「1番・ライト」でスタメン起用されると、2安打を放ち、黒田の復帰白星を後押しする活躍をみせた。

「とにかく“思い切ってバットを振るしかない”と、シンプルにそれだけを考えていました。バットを振っていかないと結果も出ませんしね。第一打席から安打を打つことができて、気持ち的にはそのあと、だいぶ楽になりました」

 開幕直後から1番に抜擢される試合が続いた野間。“1番打者”は、野間自身もプロで目指していた居場所だった。

「1番はその試合の一番初めに打席に入りますし、そこで良い形で安打を打つことができればチームに勢いを与えることができます。まだそんなに技術を持っていないことは自分が一番分かっていますが、とにかく自分の打撃でチームに勢いを与えてやろうという意識だけは忘れないようにして打席に入っています」

 現役時代に1番打者として活躍した緒方監督からも、ペナントレースが始まる前に、不安や迷いを吹っ切るアドバイスを送られたという。

「開幕前に自分なりにいろいろ変えたり、試行錯誤をしながらもがいていたときに『変えなくていい、今更変えても意味はないし、今まで自分がやってきたスタイルでこの1年勝負してみたらどうだ?』と、言葉をかけていただきました。監督からアドバイスをいただいてからは、吹っ切れたというか、割と一つひとつのプレーを思い切ってやれていると思います」

 “変えなくていい”、指揮官からの力強い助言に背中を押された野間は、開幕カードで存在感を示すと、4月の間に、プロ初の猛打賞、プロ初本塁打も記録。試合を重ねていくと、プロの壁に当たり、不振に喘ぐ時期がきたが、シーズンを通して一軍に帯同。守備固めや代走も含め、127試合に出場し、もがき苦しみながらもルーキーイヤーを駆け抜けた。