◆尋常ではない味方への要求

 プレーヤーとしても、とにかくいろいろなことを考える選手でした。とことん考え抜いてプレーする。こうするためには、こうしなきゃいけない。じゃあ、そうするためには、どうすれば良いのか。そういう順序立てを瞬時にできる選手でした。

 だから自分が点を取るために、味方に対する要求も尋常ではなかったですね。コンマ何センチの世界で「このタイミングでボールを供給してくれ」と周りの選手に常に要求していました。

 彼は相手DFの裏を取ったり視野から消えるなど、駆け引きの中で点を取るタイプです。それもあってゴール前での相手DFとの駆け引きがクローズアップされましたけど、実際はそれ以前の味方との駆け引きが非常に優れた選手だったんです。だから体が小さくても、あれだけの点が取れたんだと思いますね。

 寿人がよく「自分は仲間に恵まれたストライカー」とコメントしていましたけど、それをつくり上げたのは彼自身です。常日頃から駒野(友一)、服部公太、青山(敏弘)らに対して、さまざまな要求をしていました。あれだけの要求は、なかなかできることじゃないですよ。そこはもうサッカー云々というよりも、コミュニケーション能力の高さですよね。

 ただ体を動かすことだけが練習ではなくて、考え方を共有することも立派な練習です。そういうところはサンフレッチェだけではなく、Jリーグ全体で見てもダントツで優れていた選手だと思いますね。

(Part2に続く)