2020年限りで、19年の現役生活に幕を下ろした石原慶幸。時間がかかると言われるポジションながら、プロ2年目から100試合以上に出場。そこから激しいライバル争いを制し、カープの正捕手として長らく投手陣を支え続けた。ここではついに悲願の優勝を成し遂げた2016年の活躍を中心に現役晩年の活躍を辿っていく。

◆長年カープを支えた縁の下の力持ち。現役晩年もチームメートから厚い信頼

 黒田博樹、そして新井貴浩とかつて共に戦った戦友が同時にカープに復帰し、優勝への機運が最高に高まった2015年も、カープ一筋を貫く扇の要として投手陣を勝利に導いていた石原。5月22日のヤクルト戦(マツダスタジアム)からは黒田が先発した試合全てでスタメンマスクを被るなど、復帰初年度からの二桁勝利に大きく貢献した。

 
2015年からバッテリーを組んだクリス・ジョンソン投手とのコンビで数多くの白星を演出してきた。

 さらにこの年から、K・ジョンソンとのバッテリーがスタート。来日初登板では史上初となる準完全試合をリードした。ジョンソンは来日1年目から14勝を挙げると、2年目の2016年にも15勝をマークし、沢村賞を受賞。ことあるごとに、キャッチャーを務める石原への感謝を口にするなど、“最強助っ人”の快投の裏側には石原の巧みなリードが存在していた。

 そして投打の歯車が噛み合った2016年に、ついにカープは25年ぶりの優勝を達成。8月2日のヤクルト戦(神宮球場)ではバレンティンがスイングしたバットを後頭部に受け登録抹消などのアクシデントにも見舞われたが、25年ぶりの優勝を成し遂げた9月10日の巨人戦(東京ドーム)では試合終了までマスクを被り続け、マウンドで守護神・中﨑翔太を抱きかかえた。この年捕手としてチーム最多の試合出場数を誇った石原は野村祐輔との自身3度目の最優秀バッテリー賞、そして初のベストナイン、ゴールデン・グラブ賞を受賞した。

 
 

 リーグを代表する実力を持った選手たちが集い、チームとして成熟していたカープは2016年から球団史上初となる3連覇を達成。石原自身は徐々に試合出場数を減らし、正捕手の座を會澤翼へと譲ったが、ベテランならではの助言など経験を生かした役割を担い、最後までチームに貢献していた。

 

 2019年同様ジョンソンの登板試合がスタメンの主要機会ということもあり、プロ1年目以来となる50試合以下の試合出場数にとどまった。打率は前年同様一割台(.196)だったものの4月17日の巨人戦(熊本)では5カード連続負け越しを阻止する勝ち越し打をマーク。この一打がきっかけでチームは8連勝を記録するなど、攻守両面で確かな存在感を放った。

 そして2020年、石原は19年の現役生活にピリオドを打つ決断を下す。捕手としては球団史上最多となる1620試合への出場、そして同じく球団捕手最多の1022安打をマーク。しかし、長年チームを支えた男の貢献度は数字だけでは計り知れない。カープファンの心を表す涙雨が流れた引退試合を最後に、背番号31はグラウンドから去っていった。