Jリーグで数々の金字塔を打ち立てた、元サンフレッチェ広島の佐藤寿人が現役引退を表明した。他クラブ所属時と同様に、サンフレッチェに所属した12年間でもゴールを量産。J1歴代2位の通算161ゴールを決めたストライカーとの思い出を、サンフレOBの吉田安孝氏が余すところなく語り尽くす。

ゴールを決めたあとコーナーフラッグに向け全力疾走する佐藤寿人選手。

◆サンフレッチェには本当にうってつけの指導者

 寿人は頭もすごく良い選手でした。彼にインタビューする機会がありましたけど、聞き手としては「この言葉が欲しいな」というものがあるんです。そういうときに寿人はこちらが欲しがっている言葉を察知して、必ずそれを言葉にしてくれていました。

 プレーとは別の話になるかもしれませんが、それはプロスポーツ選手としては絶対に必要な能力です。そういうものも含めて、本物のプロだなと思いましたね。サッカー脳だけではなく、全ての面で頭が良い選手でした。

 数字とかもびっくりするくらい、よく覚えていました。何点目がいつ、どこと対戦したときのゴールだとか瞬時に出てきていましたからね。本当に数字にこだわった、本物のストライカーでしたよね。

 あと数字に関して言うならば、別の意味ですごいと思ったのが試合後のヒーローインタビューです。サポーター全員に感謝を述べる意図があったのかどうかは分かりませんが、「何万何千何百何人のお客さん、今日はありがとうございました」と一桁まで全部覚えていましたからね。

 そのときは本当にいろいろなところにアンテナを張り巡らせているんだなと、ただただ感心しました。試合直後で高揚しているときに、普通はそういうところまで意識は回りません。しかも観客数が発表されるのは試合中ですからね。