◆ファンの間で囁かれている「恵方巻の呪い」とは!?

 ところで、多くのカープファンにとって微妙な記憶を呼び起こすアイテム、それは「恵方巻」ではないだろうか。

 2013年の節分、新外国人のソコロビッチは豆をまく代わりに、マグロで「C」マークをかたどった直径15㎝はあろうかという巨大な恵方巻を笑顔で頬張った。その後、ソコロビッチは左足ふくらはぎの張りでキャンプを離脱、シーズン中もケガに泣かされ1年で自由契約となった。

 翌2014年にサラダ巻を頬張ったフィリップスもシーズン中に左膝負傷で途中帰国、2015年のザガースキーに至っては、恵方巻を食べた翌日に足首を負傷しキャンプを離脱したのである。

 一方同じ2015年、ひっそりと豆をまいていた新加入のK.ジョンソンは、先発の柱として14勝を挙げ、セ・リーグ最優秀防御率のタイトルも獲得した。

 3年連続で恵方巻を食べた新外国人が負傷したことは、いつしか「恵方巻の呪い」などと呼ばれるようになり、2016年からの節分行事は豆まきに戻された。

 この年、赤鬼の面を被って豆をまいたジャクソンとヘーゲンズが中継ぎ要員として活躍したことから、「恵方巻の呪い」の信憑性はますます高まり、「カープ三連覇の要因は恵方巻の呪いが解けたから」などという意見も囁かれるようになったのである。

 私個人の見解としては、「恵方巻の呪い」とは、恵方巻を食べたこと自体によるものではないと思う。3選手とも、「恵方を向いて無言で食べ切らなければいけない」とされる恵方巻を、食べ切らずに途中でやめてしまっているからいけなかったのではなかったか。食べ切れる大きさの恵方巻を用意すべきだったのだ。

 とは言え今後も、恐らくは恵方巻は食されることなく、豆まきが行われていくのだろう。しかし冒頭にも述べたように、今年は異例の年である。キャンプは無観客となり、何より各球団の新外国人選手の多くが来日できない事態となっている。カープも新加入のネバラスカス、バード両投手が来日時期未定となっており、豆まきどころではない。

 今この原稿を書いている段階では、カープの節分行事の予定は不明だが、早くに来日しているクロン選手が何かしてくれないだろうか、と淡い期待を持っている。 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

オギリマサホ
1976年東京都出身。イラストレーターとして雑誌や書籍等の挿絵を手掛けるかたわら、2018年より文春オンライン「文春野球コラム」でカープ担当となり独自の視点のイラストコラムを発表。著書に『斜め下からカープ論』(文春文庫)がある。