◆花粉症がひどいカープのあの選手が心配‥

 ここでカープの花粉症事情を見てみよう。遡ってみると、1990年の新聞に「赤ヘル軍団クシュン 花粉舞う日南キャンプ」というタイトルの記事が掲載されている(「朝日新聞」1990年3月3日夕刊)。記事によれば、日南市は旧飫肥(おび)藩時代からスギ造林が盛んであり、「町全体がスギ山に囲まれている」状態であるという。

 特にこの年は花粉飛散量が多かったようで、「中旬からの花粉攻勢に、アレルギー体質がひどい山本兵吾・二軍担当が『こんな苦しい年はない。練習中、空が黄色く見えるんだから』と嘆くほど」と書かれている。多くの選手が「目が痒い」「鼻がムズムズする」と訴え、「練習後も『鼻が痛い痛い』と目を真っ赤にしながら宿舎へ」向かう西田真二の様子も伝えられている。日南キャンプでは、選手たちは花粉とも戦わなければならないのである。

 一方、もう一つのキャンプ地である沖縄はどうだろうか。沖縄は気候や植生が他の地域とは異なり、スギ花粉症が少ないと言われている。「花粉症の人が多い都道府県ランキング」(一般社団法人ストレスオフ・アライアンスの調査に基づくダイヤモンド・オンライン記事より)を見ても、沖縄県は男女ともに花粉症の割合が最も低い。

 例年、一軍は日南、二軍は沖縄でキャンプインして途中で場所を入れ替えるカープの場合、キャンプ地の移動とは、「花粉が多い場所」から「花粉が少ない場所」の移動(一軍の場合)を意味する訳だ。

 ところで現在、最も有名なカープの花粉症選手が西川龍馬ではないだろうか。ここ数年、春先になると鼻づまりに苦しむ西川の姿が報じられてきた。今年もまた、ラジオ番組に出演した野村祐輔が、「ひどい花粉症の選手」として、中田廉とともに西川の名前を挙げていた(広島FM「キムラミチタのアラウンドカープ」2021年2月22日放送)。しかも今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で一・二軍の入れ替えがないということで、右足の手術明けでキャンプ二軍スタートとなった西川は、1カ月まるまる花粉の多い日南で過ごすことになる。体調が心配で仕方がない。

 花粉症選手にとって、キャンプ後も試練は続く。カープは屋外球場が本拠地であるため、ドーム球場が本拠地の球団に比べて、花粉に晒される回数はどうしても多くなる。開幕後、スタートダッシュをかけたい時期に、花粉のせいで万全なパフォーマンスが発揮できないのは何とも勿体ないものだ。今後花粉症選手特例措置として、たとえば「目がかゆくて見逃したストライクはノーカウント」とか「鼻づまりの時に打ったゴロはヒットとする」みたいなルールができないものかと、淡い期待を抱いている。

オギリマサホが考える、公式で出して欲しい「花粉症グッズ」

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オギリマサホ
1976年東京都出身。イラストレーターとして雑誌や書籍等の挿絵を手掛けるかたわら、2018年より文春オンライン「文春野球コラム」でカープ担当となり独自の視点のイラストコラムを発表。著書に『斜め下からカープ論』(文春文庫)がある。