リーグ戦、ルヴァン杯、天皇杯に加え、9月からはAFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)も開幕。今シーズンも過密日程が待ち構えているサンフレッチェ広島だが、それだけに、複数ポジションで結果を残すことのできる選手たちの活躍も目立っている。その一人、東俊希が今シーズン前半戦を振り返って語っていたこととは(全3回/第3回)

今シーズンはここまで3ゴールをマーク。クロッサーとしても高い能力を発揮する

◆ゴールの向こうにサポーターがいてくれたことは、すごく大きなアドバンテージだった

 カップ戦ではPKまでもつれた6月8日のルヴァン杯プレーオフラウンド第2戦で2番手を務めた。意外にも、プロでは初のPKキッカーだったという。

 「でも本当は、最初は3番手に立候補したんです」と東は明かす。

 一人目のジェルマンが相手GKに止められ、逆に相手の一人目は成功。2番手の東もPK失敗となれば、流れが相手に大きく傾く難しい場面だった。

 「あの時は、あまりプレッシャーを感じることなく蹴ることができました。それが良かったんだと思います。自分にとってPKは初めての経験だったので、緊張する感覚があまりなかった。あとは、ゴールの向こうに広島のサポーターのみなさんがいてくれたこと。あれは大きかったです」

 試合後、GKのチョン ミンギが『自分の後ろに何万人もの紫のGKがいた』と表現したことでも話題になったが、大声援を送るゴール裏の圧力も、広島の選手たちには大きな後押しになったようだ。

 「あれが相手側のゴールだったら、PKスポットから見た景色の感じ方も、僕の気持ちも違っていたと思います。ホーム側のゴールを選べたこと、そこにサポーターのみなさんがいてくれたことは、僕たちにとってすごく大きなアドバンテージでした」

 PK戦で冷静にゴールを決めるなど、得点シーンも印象的な2025年の東。今シーズンはここまで2得点と、自身のキャリアハイである2024年の4得点(リーグ、カップで記録)を超える可能性も高い。

 「今シーズンのゴールの目標は、現実的に考えて5得点。チャンスはたくさんあるので、あとはそれを決め切れるかどうかです」と、キャリアハイ超えに向け意欲を見せる。

 チームは今シーズン、リーグ戦、ルヴァン杯、天皇杯に加え、ACLEの出場も決定している(7月15日時点)。例年以上の過密日程になることが予想されるが、それだけタイトルをつかむチャンスがあるということでもある。

 「ルヴァン杯の優勝は、観客席から見ていました。今度は僕がピッチで優勝を体験したいと思っていますし、可能性が十分にある立ち位置にいるとも思っています。ここからはより一層、1試合1試合をしっかり勝っていくことが大事になります。1戦、1勝を大事に戦っていきたいです」

 2022年、観客席から見守った歓喜の瞬間。今シーズンこそはその輪の中心に立つために、東はピッチを駆け抜ける。

 「ここからまたチーム一丸で戦っていきます。ファン・サポーターのみなさんも一緒に戦ってもらえれば、優勝にも近づけると思うので、応援よろしくお願いします」

■東俊希(ひがし・しゅんき)
2000年7月28日生、愛媛県出身
サンフレッチェ広島ユースー広島
ポジション:MF
広島ユースから2018年にトップチームに2種登録され、同年の天皇杯でプロデビュー。高校在学中からアンダー世代の日本代表に複数回選出されるなど実績を重ね、2019年にプロA契約を締結する。主に左サイドとして出場機会を増やしてきた。2024シーズンは自身最多の38試合に出場。そのほぼ全試合で先発出場している。