12年、エルドレッドに新たなチャンスがやってきた。栗原健太(現楽天コーチ)やニック・スタビノア(12〜13年カープ在籍)の故障でカープが右の大砲を緊急補強することになり、彼に白羽の矢が立ったのである。

 「カープから電話があったとき、すぐにサインしようと思いました。この体の大きさを生かして打点を稼いでホームランも打ちたいです。自分で自分に期待しています」

 4番・ファースト、求められるのは長打。しかし、エルドレッドが大成功を収めることができたのは、ここから、チームや日本のプロ野球にマッチできるように『最適化』を重ねたからである。

 「日本もアメリカも野球は同じですが、投手が違うタイミングや軌道で投げてきます。そのあたりを頭に叩き込むようにしました」

 さらに生活である。日本語で挨拶を交わし、買い物にも積極的に出かけた。ラーメン店のカウンターが窮屈に感じたのも貴重な経験だ。

 「言葉の違いや文化の違いを楽しめています。日本語を使っての買い物も楽しいし、日本の規格の建物にいると自分の体が大きいことをあらためて感じることができました」

 真摯にチームの勝利に貢献するなかで、ホームランへの考え方も変わっていった。

 「叶うことならホームランが欲しいですが、やれることはボールに良いコンタクトをすることです。打球の行き先はコントロールできませんが、自分のスイングとコンタクトは何とかできます。ボールをしっかり見て自分のスイングをすることに集中しました」