7年間の取材メモを辿ると、アメリカからやってきた男がいかに日本に適応してきたかが良く分かる。

 生活になじみ、日本の野球を理解し、チームの方向性に対応する。むしろ、『最適化』という言葉の方が相応しいかもしれない。

 196センチ126キロ、高校時代は初打席で満塁ホームラン。典型的なパワーヒッターである。05年7月にパイレーツでメジャーデビューを果たすと55試合で12本塁打とハイペースで長打を量産した。しかし、簡単にメジャー定着は叶わなかった。翌06年、通算1531安打の実力者であるショーン・ケーシーがパイレーツに移籍してきたのである。おまけに、エルドレッドも左手親指を故障するなど、次第にベンチで過ごす時間が多くなっていった。ただ、野球への情熱はいささかも衰えない。08年には、3Aで35本塁打、100打点をマークし、着実に実力を蓄えていた。

 競争の激しいMLBでは、数多あるストーリーかもしれない。ただ、フルスイングで野球人生を切り拓こうとするブラッド・エルドレッドを見ていた人物がいた。カープのエリック・シュールストロム駐米スカウトである。

 「第一印象はすごいパワーでした。ただ、三振も多かったですし、スイングに無駄な動きがあったように感じました」