「キャッチボールの感覚は良いです。でも、マウンドに上がると、自分の力感で投げることが満足感につながり、力が入り過ぎてしまいます。目指す動きよりも気持ちの方が勝ってしまうんです。自分をコントロールして、あの感覚でマウンドでも投げたいです」

 『気迫のこもったナイスピッチング』。我々は慣用句のように口にする。しかし、気迫と理想の投球動作が同居することは簡単ではない。その折り合いをつけるためには、試行錯誤と反復練習なのである。だからこそ彼は、室内練習場で考えながら、首をひねりながらネットスローを繰り返す。ピッチングスタイルへのこだわりはある。

 「僕は三振を奪えないと魅力がないでしょう。実際、三振を取れることはすごくプラスです」

 だからこそ、『適度の脱力』と『力投』のリンクする境地を開拓したいと考えている。

 来季は入団4年目、次なるドラフト1位も入ってくる。落ち着いた語り口ながら、焦りとも無縁ではあるまい。目標もあれば、求められる役割もある。しかし、まずは完全燃焼のシーズンを誓う。

 「毎年チームに貢献したいと思っていますし、しっかり投げたい気持ちは変わりません。それと、シーズンが終わったときに、やり切って自分の力を出せたというシーズンにしたいです」

 燃えている。昂っている。それでいて、力まない。無駄のない、あの青い完全燃焼の炎のようなピッチングを目指し、彼は、グラウンドの中でも頭の中でも、戦っている。

取材・文/坂上俊次(RCCアナウンサー)
1975年12月21日生。テレビ・ラジオでカープ戦を実況。 著書『優勝請負人』で第5回広島本大賞受賞。2015年にはカープのベテランスカウト・苑田聡彦の仕事術をテーマとした『惚れる力』を執筆した。