突き詰めて考えるタイプである。野球やスポーツの理論に明るい。トレーニングの知識も豊富で、常に根拠を持って練習に臨んでいる。頭には理想とする投球フォームがある。しかし、これが常に再現できるとは限らない。投げる人間の感情が左右するからである。

 「マウンドでは力が入ってしまうことが多いんです。感覚的にも動きが少し早くなってしまいます。自分の体を操ることができる時間がいくらか短くなるということです。自分をコントロールできないようでは、相手打者とは戦えません」

 もともとは感情を爆発させて投げるタイプだった。慶應義塾大では1年から150キロをマークした剛腕である。足を高く上げるフォームから魂を込めた速球を投げ込んでくる。苑田聡彦スカウト統括部長も「魂が飛んでくるような投げっぷり」というコメントで評したことがあるほどだ。

 「もう力技で投げていました。オリャーと投げて、結果は良いか悪いか、これでは安定しません。できるとき、できない時の差が大きくありました」

 MAX153キロのストレートに落差の大きいフォークボール、大学通算24勝はもちろん、通算309奪三振の力投派は2016年、ドラフト1位でカープに入団した。魅力と課題は背中合わせだった。ルーキーイヤーの2017年、プロ初登板で9回1アウトまで無安打無得点の快投でプロ初勝利をマークした。鮮烈なデビューを飾った一方で、シーズンはこの1勝のみだった。翌2018年は一軍登板もなく、本来の力を発揮できなかった。そしてプロ3年目となった勝負の2019年、自主トレから良い感覚があった。

 「なんとなく地面から力が伝わってくる感覚を持ち始めていました。それができていました」