◆「森下暢仁の金髪」野球選手の髪型論

 一方で開幕後、試合を見ていく中で、「あれ、この選手、こんな髪形だったっけ?」と目に留まった選手もいる。

 2年目の森下暢仁である。1年目の昨季は黒髪だった森下が、オフに茶髪にしたことは知っていた。ただ「オフシーズンは髪形で遊び、開幕後は元に戻す」という高校生の夏休み明けのような選手が多い中、森下の茶髪は開幕後に一層明るくなったように見える。マツダスタジアムの照明を受けて金色に輝く森下の茶髪を見ながら、私はうっすらと長谷川昌幸を思い出していた。

 そもそもなぜ森下の茶髪が目に留まったかというと、近年茶髪の野球選手の数が減少している気がするからである。1990年代後半~2000年代あたりには、上記の長谷川含め、世間の茶髪ブームに呼応するように茶髪や金髪にする野球選手が多くいた。野村政権時代の楽天や尾花政権時代の横浜など、茶髪を禁止する球団も複数登場したのもこの頃である。

 ところで、なぜ野球選手の髪形のトレンドが歴史的に「パンチパーマ」と「茶髪」に集約されてきたのか。それは「野球選手は常に帽子やヘルメットを被らなくてはならない」ということに尽きると思う。普通の髪形では、何時間も帽子を被った後にはペシャンコになってしまう。そのため、ちょっとやそっとでは崩れない固いパンチパーマや、汗をかいてもベットリした印象にならない茶髪が好まれたのではないだろうか。

 現在では、茶髪が一時期ほどの流行ではなくなったこと、カットの技術が進んで長時間帽子を被っても崩れにくい髪形が増えたことなどもあり、目立つほどの茶髪にしている選手は少なくなった。

 さて、今でも一部には「野球選手は髪形などにうつつを抜かしていないで、野球に専念するべきだ」という意見も見受けられる。しかし本当にそれでよいのだろうか。

 試みに、矢野と森下の髪形を交換してみると(イラスト参照)、どうにもしっくりこない。

 矢野にはパンチパーマが、森下には茶髪が似合うし、本人達も恐らくそれをわかっていて現在の髪形にしているのだということがわかる。

 矢野、森下含め、カープの選手達には、自分が納得のいく髪形で最大限のパフォーマンスを見せてもらいたいものだ。

 

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オギリマサホ
1976年東京都出身。イラストレーターとして雑誌や書籍等の挿絵を手掛けるかたわら、2018年より文春オンライン「文春野球コラム」でカープ担当となり独自の視点のイラストコラムを発表。著書に『斜め下からカープ論』(文春文庫)がある。