2020年ドラフト上位組が、一軍の舞台で圧巻の投球を披露し続けている。八戸学院大から3位指名を受けた大道温貴も、“炎のストッパー”と称された津田恒実氏を彷彿とさせるようなマウンドさばきで打者に付け入るスキを与えていない。ここでは長年アマチュア球界の好投手たちの球を、実際にブルペンで受けた上で選手を取材し続ける“流しのブルペンキャッチャー”こと安倍昌彦氏の、ドラフト直後の大道評を再録する。

変化球ではスライダーとスプリットに自信を持ち、目標としている選手として前田健太投手(ツインズ)の名前を挙げる大道温貴投手。

◆大学時代に急成長。持ち味はスピンの利いた直球

 八戸学院大からドラフト3位で指名されたのが、大道温貴投手です。カープにとっては3位までを社会人、大卒投手で固められただけに、非常に充実したドラフトだったのではないでしょうか。

 高校時代は“普通の好投手”だった大道投手ですが、大学で直球の質を高め一気にドラフト上位指名候補となりました。棒球ではなく“生きた球”を投げられる点は素直に評価したい点です。真上から投げ下ろしてはいるのですが、まるでアンダースローの投手が投げているようなホップする直球は、大道投手が投げる球の中でも非常に威力がある球です。

 どちらかと言えば、ドラフト1位の栗林と同じくきれいな回転の直球を投げるタイプです。キレが良いだけに空振りをとれる球ではある一方で、バットの入り方次第では、飛距離が出る諸刃の剣でもあります。そういう意味でも大道がプロ野球の世界で活躍するためには、直球と同じレベルで使い勝手の良い変化球が求められてくると思います。

 役割としては先発、中継ぎどちらでも起用できるタイプの投手だと思います。マウンドでの投球を見てきた印象で語るならば“ピンチの場面こそ燃えるタイプ”の投手です。端正な顔つきの持ち主で、表面上は穏やかそうな性格の持ち主ですが、内に秘めた闘志は凄まじいものを持っていると見ています。

 いつの日かの試合で、ピンチの場面で監督が球審に投手交代を告げているのを、素知らぬ顔でショートとキャッチボールをしている場面を見たことがあります。私には『自分はマウンドをまだ降りたくない!』という意思表示のように感じられましたし、実際マウンドを降りた後に非常に悔しそうな表情をしていました。

 自分の不甲斐なさをしっかりと正面から受け止めた上で、悔しがるタイプの投手だと見受けましたし、大学時代に一気に成長を遂げたという点を考えても、今後プロ野球の世界でどのような成長を見せていくのか楽しみな存在です。