首位・阪神から8.5ゲーム差ほど離されての5位と、3年ぶりの覇権奪還を目指すカープにとって厳しい戦いが続いている。だが、過去には怒とうの追い上げで逆転優勝を飾るなど、意地と実力を見せつけたシーズンも存在する。ここでは数回にわたり、カープが底力を見せたシーズンを振り返る。

3割打者はゼロだったが、チームは山本浩二らの効果的な一発で勝利を積み重ねた。

◆ゲーム差0、勝率わずかの差で逆転優勝

 阿南準郎新監督のもとスタートした1986年。4月は開幕ダッシュに成功するなど、前半戦はエース・北別府学が順調に勝ち星を重ね、打撃陣も山本浩二、衣笠祥雄の両ベテランが効果的な一発を放つなどして優位にペナントレースを進めた。

 ベストオーダーは髙橋慶彦、山崎隆造、長内孝、山本、衣笠、長嶋清幸、正田耕三、達川光男と、助っ人外国人に頼らない布陣を形成。機動力野球を駆使することで、前半戦を首位でターンした。

 だが、後半戦に入ると両ベテランが調子を落とし、得点力が低下。ライバルの巨人に突き放され、8月下旬には一時5.5ゲーム差をつけられるなど優勝は絶望的な状況に追い込まれた。

 しかし、ここからカープが驚異の粘りを見せる。9月に入り山本、衣笠が息を吹き返すと、若手選手も両ベテランに引っ張られるように踏ん張りを見せた。投手陣も北別府が完投に次ぐ完投で勝ち続け、この年からストッパーに配置転換された津田恒実も大車輪の活躍で先発投手陣を支え続けた。

 9月後半の1試合も落とせない状況の中で、チームは8連勝を記録するなど守り勝つ野球で白星を積み重ねた。そして迎えた129試合目。巨人とのゲーム差は0、勝率わずかの差という稀に見る激しいデッドヒートを制し、2年ぶりのリーグ優勝をつかみ取った(勝率/カープ.613、巨人.610)。当時は130試合制であり、まさに土壇場での逆転優勝だった。

 なお、このV5を最後に4番の山本が現役を引退。打率.276、27本塁打と余力を残した中での勇退だった。