チーム打率はそれほど悪くないものの、今季のカープは得点不足が顕著となっている。そんななか好調を維持していた菊池涼介、小園海斗らが離脱。主軸にも当たりが戻らないとなれば、チームの情勢はさらにひっ迫する。ここでは4番として昭和黄金期を支えた“ミスター赤ヘル”山本浩二氏の『4番論』を再録する。
(『広島アスリートマガジン』2018年8月号掲載)

指揮官時代に江藤智、金本知憲、新井貴浩らを育てあげた山本浩二氏。

◆4番の育成は我慢が必要

 現役引退後は監督として、江藤智、金本知憲、新井貴浩らを4番打者として育成してきました。私が監督として4番育成をするにあたり、まずは4番としての資質がある選手を重点強化選手に位置付けることから始めていました。

 そして、コーチ陣に彼らを預けて、徹底的に鍛え上げてもらいました。私が考える4番の資質を持った選手は長距離砲であること、精神的な強さを持っていること、そしてリーダーシップを見せることができる。最低限これらの要素が必要になると考えています。

 監督として4番打者を育てる上で、最も大事なのは我慢です。中でも特に印象に残っているのは新井です。2003年、金本がFA移籍したことで彼を4番に抜擢したのですが、2年間は全く成績を残すことができませんでした。今思い返してみれば、少し可哀想なことをしたかもしれません。

 しかしながら、当時のチーム事情と将来を考えたときに、無理にでも4番として使い続けなければならないと感じていました。新井もそこからいろいろな苦労がありましたが、それを乗り越えて2年後の2005年には本塁打王を獲得するまでになり、その後は不動の4番へと成長してくれました。少し時間がかかったかもしれませんが、あの苦しい2年間は彼にとって良い経験になっているはずです。