守護神として活躍を続けているドラ1右腕の栗林良吏投手。

◆意識の変化が、決め球フォークを進化させた

 6月10日のソフトバンク戦で、ドラ1右腕の栗林良吏が、開幕から22試合連続無失点の球団新記録を達成した。同点の9回にマウンドに上がると、得点圏にランナーを背負いながらも無失点で試合を締めくくり、2013年に河内貴哉氏がマークした球団記録を更新した。

 開幕から守護神として大車輪の活躍をみせている栗林が、佐々岡真司監督から守護神指名を受けたのは、オープン戦最後の対戦カード。球団新記録を達成した日と同じソフトバンク戦だった。

 「佐々岡監督から『結果が出ても結果が出なくても、責任は俺がとるから全力でやってくれ』と言っていただき、その言葉は大きな励みとなりました」

 そして、守護神・栗林の代名詞となりつつある決め球のフォークボール。現役時代、同じくフォークボールを得意とした永川勝浩一軍投手コーチのアドバイスにより、栗林の武器は大きな進化を果たした。

「今まで自分は、(フォークボールを)低め低めの意識で投げてきましたが、漠然と低めに投げるのではなくて、ストライクゾーンの中でもちゃんと落ちていれば、打者は嫌がるよと永川コーチから教えていただき、低めに投げるだけではなく、落として低めにいく意識も持つようになりました」

 初登板は、開幕2戦目・3月27日の中日戦(マツダスタジアム)。3点リードの9回に登板すると、相手打線を三者凡退に抑えてプロ初セーブをマーク。以降も、重圧のかかるクローザーのポジションでありながら、無失点投球を続けると、5月4日の巨人戦(マツダスタジアム)で、初登板から14試合連続無失点というプロ野球新記録を樹立。そして、6月10日のソフトバンク戦で、開幕から22試合連続無失点の球団新記録を打ち立てた。

 プロ1年目から次々と金字塔を打ち立てる栗林。その裏には、前述の永川一軍投手コーチの存在がある。

「永川コーチには、フォークボールの使い方もですが、メンタルを整えるという意味で準備の大切さは何度も教えていただきました。今年は特別ルールの関係で、登板が回ってくる順番はほぼ分かっているので、最終回から逆算して、ルーティンなどを含めてしっかり準備していこうとアドバイスいただきました。打たれたらチームの勝ちも先発投手の勝ちも消える可能性が出てくる責任感のあるポジションなので、最低限準備だけはしっかりしようと心に決めています」

 現役時代、守護神として数々の修羅場をくぐり抜け、球団最多となる通算165セーブを記録した永川コーチの言葉は、最終回のマウンドに向かう栗林の心にしっかりと刻まれている。

 開幕からの連続無失点のプロ野球記録は、2016年の田島慎二(中日)と、今季、平良海馬(西武)がマークした31試合。投げるたびに存在感が増すカープのミスターゼロが、どこまでその数字に近づけるか、楽しみに見守りたい。