古葉さんが監督退任後の86年から、長年コーチだった阿南準郎さんが監督に昇格されました。コーチ時代の印象は物腰柔らかく、優しい方というイメージで、監督になられてからも基本的に変わりませんでした。
古葉さんの下に長年就いていた方で、就任会見でも古葉野球を継承すると仰っていました。それだけに自分でやりたい野球を封印されていた印象がありましたが、それは野球観が古葉さんと同じだったということでしょう。
ですが、スタメン、投手起用にしてもこれと決めれば頑固なまでに、それを押し通すなど、采配的なものは頑固さがある方で、これが阿南監督の特徴です。主力としてプレーさせていただきましたが、レギュラーの私を大人扱いしてくれた監督でもありました。
就任1年目の86年に優勝しましたが、当時は外国人選手がおらず、純日本人チームで古葉野球を見事に継承し、勝つ野球を知っていた主力メンバーをうまく起用されていました。野球の緻密さを知るメンバーが各々の役割を遂行し、阿南さんの頑固さが上手く融合した上での優勝だったと思います。
いわゆる黄金時代と呼ばれた時代を振り返ってみれば特に古葉監督時代、コーチ陣はみなさん監督を慕っていたイメージがありました。阿南さんが監督になられて古葉野球を継承されたのも納得できます。
それだけ当時はカープ野球がはっきりしていて、選手としても先輩の背中を見て後輩が育つという伝統がありました。そして首脳陣と選手が同じ方向を見て、常に一丸だったからこそ、常勝軍団を形成できていたのだと思います。