東京五輪で金メダルを目指す侍ジャパンのメンバーに、カープから12球団最多となる4選手が選出された。この連載では、侍ジャパンの4番として期待がかかる鈴木誠也が、過去に本誌の独占インタビューで語った思いを取り上げ、プロ入りからここまでの軌跡を振り返る。

 9回目となる今回は、プロ4年目の2016年夏に行ったインタビューの後編。この年、打率.335、156安打、29本塁打、95打点の成績を残し、25年ぶりの優勝に大きく貢献した活躍の影には、打撃への飽くなき探究心があった。
(広島アスリートマガジン2020特別増刊号「鈴木誠也 全インタビュー集」に掲載)

2016年6月4日の試合前練習の鈴木誠也選手(右)と東出輝裕打撃コーチ(左)。この年から一軍の打撃コーチが3人体制となった。

◆["神った直後"の鈴木に迫る]誠也の魅力って何だ?(後編)

─振り返ると今季は開幕前にケガで離脱されていました。リハビリ中はどんな気持ちで過ごしていましたか?

「本当に情けないと思っていました。今は『絶対にケガをしない』という気持ちが以前よりも強くなっていますし、これまで以上に体をケアするということに関しては気を使うようになりました」

─4月5日に一軍復帰して間もなくは、なかなか結果が出ない日々が続いていましたが、不安はありましたか?

「不安は特にありませんでした。ただ毎回打席に入る度に『何だこの打率は』と思って悔しかったですし、『なんとか変われないか、一つ殻を破れないか』と思いながら、ずっとモヤモヤしていました」

─今季から一軍では打撃コーチが3人体制ですが、鈴木選手自身プラスになっているところはありますか?

「打撃コーチが3人だからといって特に堅苦しいという感覚はありません。特に琢朗さんからは遊び感覚の中から、いろんなアイデアで練習方法を出してくれるので分かりやすいです。いつも『自分でやってみて、良いと思ったらやってみろ』と言われています。各コーチともすごくコミュニケーションが取れていると思います。今はまだ自分にどんな練習法が合っているかが分からなくて、いろいろと模索中です」

─5月以降、鈴木選手は打撃好調をキープされていますが、昨季と技術的に変わった部分があるのでしょうか?

「今まで打撃練習でも、自分の打てるゾーンしか待っていないことが多くあったのですが、結局それが試合で生きていませんでした。試合では相手投手も全力で抑えにきますし、いろんなゾーンに球がくるので、ボール球を振ってしまうこともあります。その中でヒットを打たなければいけないので、今まで全く意味のない練習だったのかなと思います。今季は東出(輝裕・一軍打撃コーチ)さんから『練習の時から、自分の打てるゾーンから球が1個2個分離れていても、とにかく振ってアジャストしていけ』と言われています。それから高めなどを振りにいって、自分の感覚だったり、良いバットの出し方だったり、そういうことが練習で自然とできるようになってきて、試合でも良いスイングができるようになってきたんだと思います」

◆2013年から2020年に行った鈴木誠也のインタビューは、広島アスリートマガジン2020特別増刊号「鈴木誠也 全インタビュー集」で公開中。