残った数字に納得していない

─ここまで、ほぼ4番スタメンが続く中で自身の打撃内容については、どのように感じていますか?

「昨季とは打球の質が変わってきた感じがします。『これまでなら、この打ち方でこういう打球を打てていたのに、今この打ち方をするとホームランになってしまう』みたいな。僕の中ではホームランを求めたくないんです。『ヒットを求めた中での延長がホームラン』だと思っていたのに、打席に入るとホームランのイメージしか出なくなってしまっていたりします。今季に関しては技術的な面での葛藤もいろいろありますね」

─しかしながら、打率、本塁打、打点と打撃主要3部門でいずれもリーグ上位の数字が残っています。

「現時点で打点に関しては良い数字が残こせているのではないかと思います。打点は4番が稼がなきゃいけない部分だと思いますからね。ただ、得点圏打率(7月13日現在 ・275)が低いことに全く納得していませんね……。成績、数字ではあまり左右されないので、自分が残す数字よりも、自分の技術ですね。今はそれが良くないという感覚が強いです。数字が残っても、自分の感覚が良くないと満足できないですから。その中でも結果が出ているというのは、昨季とはまた違うところなのかなと思う部分もあります。昨季は良い状態がずっと続いていたので、良い結果を残すことができましたが、今季はそうはいかないというのは分かっていました。その中で試合に出続けて結果が出ているというのは、良いと思うんですけど……、まだまだですね」

─4番として葛藤を感じる中、周囲にアドバイスを求めることはありますか?

「技術的なことはあまりありませんが、チームで4番を長く打っていた方は新井(貴浩)さんなので、新井さんのところに4番としての試合への入り方、精神的な部分を聞きにいくことがあります。具体的には『こういう苛立ちがあるんですけど、どうしたら良いんですか?』などですね。あとは、4番に入ったことで自分もいろいろ変わった部分もあったので、 『いつもどういう意識で4番を打っていたんですか?』とか『今こういう気持ちなんですけど、同じようになったことはありますか?』という質問もさせてもらいました」

─自主トレを共にした内川選手もチームでは4番ですが、助言を求めたことはあるのでしょうか?

「内川さんも普段4番を打たれていますが、自主トレの時にまさか自分が打つことになると思っていなかったので、特にそのことについてはまだ聞いていません。なので、またオフに聞いてみたい気持ちがあります。ただ、内川さんに助言をいただいたとしてもそれだけが正解な訳ではありませんし、人それぞれ考えが違う部分があると思うので、いろんな人に助言を求めたいと思います」

─現在の鈴木選手にとって、理想の4番像はありますか?

「理想の4番ですか……正直今は全く分からないですし、それを考える余裕がありません。なので、まずはケガをしないように頑張りたいですし、まだまだシーズンは続いて試合数も残っているので、きっちり自分の仕事をしていくだけだと思っています」

◆2013年から2020年に行った鈴木誠也のインタビューは、広島アスリートマガジン2020特別増刊号「鈴木誠也 全インタビュー集」で公開中。