悩めるうちはありがたい

─今季、自身の打撃内容に関してはどのような印象を持っていますか?

 「あまり良くはないですね……。特に良いときの感覚を求めているわけではないんですが、迷いがあるというか……。やはり相手投手は僕にスイングをさせないように投げてきますし、それに対して『初球はボールから入ってくるんだろうな』という考えでいくと、ポンとストライクを取られてしまって、そこから焦ってしまうという感じの打席が続いていました。本当になかなか自分のスイングができないという状況ではあります。でも、その対処法はある程度頭に入っています。まだまだ試合はありますし、修正の余地はあると思います。これから、しっかりと立て直していきたいと思っています」

─復帰されてから、両足の幅を狭めるなど打撃フォームを模索されていました。

 「それに関しては今に始まったことではありませんからね。プロに入ったときから、もともと試合中にいきなりタイミングの取り方を変えたりしていましたし、それで出来てしまうこともあるので、そこは別に気にしている部分ではありませんね」

─今季も強力打線の中で4番として出場が続いています。昨季4番を経験したことが生かされていることはありますか?

 「特に意識として変わったことはありませんが、4番を打たせてもらっていれば毎年模索している部分はあると思います。4番は決して楽ではないですし、楽しいポジションではありません。でも、そういうもので悩めるうちはありがたいことだと思ってプレーさせてもらっています」

─鈴木選手は今季でプロ6年目を迎えますが、5月9日のDeNA戦では同じ12年ドラフト組で同学年の3人(7番・髙橋大樹、8番・美間優槻)が初めて一軍で同時スタメンでした。意識する部分はありましたか?

 「素直にうれしい気持ちはありましたね。僕も自分のことで精一杯な部分があるので、そんなに気にしているわけにもいかないのですが、3人ともヒットを打てて、良かったなと思いましたし、やっぱり同期が打つとうれしいです。でも、同期に限らずチームメートがヒットを打てばうれしいですよ。やっぱりキャンプからキツい練習をみんなで一緒にやってきていますからね。僕としては誰かがヒットを打てば、みんなで喜ぶべきだと思っています」

─昨季は故障離脱した期間に優勝を迎えただけに、今季は優勝を目指す上で違った感覚はありますか?

 「そうですね。昨年も一昨年も個人的には優勝を強く意識していた訳ではなく、1日1日を必死でやっていたら、どんどん2位とのゲーム差が大きくなっていって、気づいたら『優勝なんだ』という感覚でした。やはりそれは、キャンプからやってきた自分たちの野球を展開することができた結果だったと思うんです。今年もキャンプをしっかりとこなした上でプレーしていますし、もちろん優勝を目指しています。ですが、選手としては1試合1試合を一生懸命やろうと思ってプレーしている結果が現在の首位という位置だと思うので、そこは変わらずやっていきたいです」

─これから後半戦にかけて、鈴木選手自身の役割、また4番としてどのような働きを見せていきたいですか?

 「やっぱり打点を意識して、状況に応じた打撃をしていきたいと思います。もちろん自分を犠牲にする場面もあると思いますし、分が悪い相手と対戦して『ここで走者を進めたいな』という場面では、そういう打撃も必要になってくると思います。自分の立場も踏まえて、状況に応じた打撃を見せていきたいですね」

─では最後にカープファン、読者のみなさんに向けて、今後の意気込みとメッセージをお願いします。

 「実際、ヤジもありますけど、もっとヤジってください(笑)。僕もテレビでサッカーW杯を見ていたら気持ちが入ってしまって、思わず『何してんだよ!』って言ってしまいます。それを考えてみたら、いつも応援していただいているファンのみなさんもそれと似た感覚だと思うんです。『4番なのに何で打たないんだよ!』みたいな(苦笑)。たぶん、それが普通だと思います。そういう意味でも、それは今回W杯を見て学んだことかもしれないですね(笑)。ヤジられることもあると思いますが、頑張ってプレーしていきたいと思います!」

◆2013年から2020年に行った鈴木誠也のインタビューは、広島アスリートマガジン2020特別増刊号「鈴木誠也 全インタビュー集」で公開中。