いよいよ明日、開幕する東京五輪。この連載では、侍ジャパンの主砲として期待がかかる鈴木誠也が、過去に本誌の独占インタビューで語った思いを取り上げ、プロ入りからここまでの軌跡を振り返る。

 2017年8月後半に足首を骨折し手術を行った鈴木。今回は、その翌年、2018年に行ったインタビューを取り上げる。リハビリを乗り越え、初の開幕4番でスタートした一年、鈴木が抱いていた思いとは。
(広島アスリートマガジン2020特別増刊号「鈴木誠也 全インタビュー集」に掲載)

若き4番打者として、広島打線の中心を担っていた2018年の鈴木誠也選手。

◆[故障から這い上がり3連覇に貢献]再び歩む、4番道

─苦しいリハビリを乗り越え、初の開幕4番スタメンスタートとなりました。

 「開幕4番ということよりも、いざ開幕を迎えるまでに『本当に間に合うのかな』という気持ちがずっとあったので、開幕に間に合ったうれしさがまずありましたし、『開幕戦は出られないかもしれない』と思っていたので、4番よりも、単純にスタメンで出られた事実がうれしいという感覚でした。でもホッとしてしまったのか、すぐに離脱してしまいましたけどね(苦笑)」

─開幕戦の第一打席はスタンドからの大歓声の中で迎えました。ファンのみなさんの声援に感じるものはありましたか?

 「そこは意外に冷静だったので、ファンのみなさんの声援も聞こえていました。改めて、本当にありがたいことだなと思いましたね」

─昨季8月23日以来の公式戦でしたが、長く感じましたか?

 「リハビリ中はとにかく1日1日良くしたい気持ちだけでした。朝起きてみてもまだ良くなってない、良くなってきたと思ったら次の日はまだ痛みが残っているとか、その繰り返しだったので……開幕までは時間が足りず、本当に短く感じましたね」

─相当な不安を抱えた上でシーズンを迎えたのですね。

 「そうですね。『自分のプレーが今はできないんじゃないか』という不安の中からスタートして、『とにかく同じケガはしたくない』とか、そのケガをかばって『他の箇所を痛めたくない』という思いが強すぎて、多少なりとも序盤の試合はプレーに影響が出てしまっていたのかなと思います」

─下半身の張りで4月4日に一軍登録抹消となりました。開幕直後でしたが、どのような思いだったのでしょうか?

 「なってしまったものは仕方がないので、まずはしっかり治すことだけを考えました。焦っても結局、もともと手術した箇所が消えるわけではないですからね。また治ったところで、どうせかばってプレーすることになると思うので、そこをおろそかにすると同じことの繰り返しになりますから。もちろん焦る気持ちがありましたし、チームの負けが続いたりすれば『早く戻りたい』という気持ちはありました。自分としては、まだレギュラーポジションを自分の力で獲ったとは思っていないので、『何をしてるんだろう』と、そういう危機感というのは常にありました」

─4月18日に一軍再登録されましたが、走攻守それぞれに不安はありましたか?

 「全体的に不安はありましたね。正直、違和感もありましたし、やっぱり『もうケガはしたくない』という思いが強かったので、どうしても最初は動きをセーブしてしまっていた部分はあったかもしれません。ただ、試合に出る以上はそれを言い訳にしたくはありませんでした」

─改めて、ケガをしてしまったことから学んだことはあるでしょうか?

 「正直な気持ちを言えば、しんどかったですね。『ケガなんてもういいわ』って(苦笑)。4月に関しては離脱期間も短かったので、本当に自分のやるべきことをやれていましたし、そこで考え方が変わるかと言えば、特にそういうことはなかったです」

─一軍に復帰後は徐々に調子も上がっているように感じますが、ケガに対する恐怖感はある中でのプレーなのでしょうか?

 「正直、ケガを恐れていたら良いプレーもできないですし、『昨年のあのケガは自分の運命なんだ』と思って、切り替えてプレーしていきたいです。怖さもありますが、そこに勝たないといけませんし、敵は自分だと思うので、そこにどんどん勝てていければ、自ずと良い結果はついてくると思っています。特に人のことを気にすることなく、自分のことに集中してやっていきたいです」

◆2013年から2020年に行った鈴木誠也のインタビューは、広島アスリートマガジン2020特別増刊号「鈴木誠也 全インタビュー集」で公開中。