3年間在籍した甲府では、出場機会を得られないシーズンを経験。それでも諦めず、腐らず、強い信念で、サッカーに向き合ってきた。2020年にはポジションを奪い返し、36試合に出場して活躍。泥臭く戦い、ついにJ1の舞台までのし上がってきた今津佑太の思いに迫る。

対人プレーの強さはJ2屈指のDFと呼ばれるほど高い評価を受けていた今津佑太選手。

◆屈強な外国人FWにも臆せずJ1で脅威となるDFを目指す

―流通経済大柏高、流通経済大を経て2018年に甲府に加入した今津選手。今季、サンフレッチェ広島への完全移籍で、J2からJ1へのステップアップを果たされました。

「今年はプロ4年目なので、そろそろ次の段階に進みたいと感じていました。そのタイミングで広島からオファーをいただいたので率直にうれしかったです。これまでJ2である程度プレーできていると思っていましたし、ルヴァン杯でJ1の選手と対戦して手応えを感じていたので、J1の舞台に挑戦したい気持ちが強かったです」

―広島が展開するサッカーにはどんな印象を持っていましたか?

「能力の高い選手がたくさんいて、佐々木さん、荒木さん、野上さんという鉄板のDFがいることは知っていました。この3人の中に割って入っていくことになりますが、チャレンジして通用しなければ、自分はそこまでの選手だということ。そして、チャレンジした決断を〝正解にしていく〟作業こそ、大切だと思っているので、決断に迷いはありませんでした」

―今津選手は山梨県出身で、甲府は地元のチームです。広島への移籍を誰かに相談したりされたのでしょうか?その時の周りの反応はいかがでしたか?

「移籍することは自分で決めたので、相談はせず報告をしました。甲府にはプロ19年目を迎えた山本英臣さんという先輩がいて、『J1で鉄板のDFがいる環境にチャレンジするのは、すごく良いことだと思う。その中で得られるものがあるはず』と背中を押してくれました。臣さん(山本英臣)はダメなものはダメとはっきり言ってくれる人で信頼しているので、この決断は間違いないんだと思うことができました。あとは、お世話になった方々へ挨拶に回りました。移籍することを伝えると普通は寂しい雰囲気になるのですが、広島だと言うと、とても喜んでいただけました。広島には甲府から移籍した柏さんと佐々木さんがいて、二人とも活躍をされているので、気持ち良く送り出してくださいましたね」

―リーグ戦12試合に出場されていますが、J1でのプレーはどうですか?

「対峙する外国人ストライカーは、当然ですがJ2よりJ1の方が強いです。ただ、札幌のアンデルソン・ロペス、川崎のレアンドロ・ダミアンに対して完勝できたわけではないですが、圧倒されたかというとそうでもありません。ある程度は対等に戦うことができたので、J1でも通用するという手応えを感じました。しかし、これからもっと力をつける必要があるのは間違いありません。まずはチーム内での競争に勝って試合に出ること。そして出番に向けてしっかりと準備をして、良いパフォーマンスを出せるようにすることが大切だと感じています。頭の中では常に活躍するシーンをイメージしています」

―サンフレOBの吉田安孝さんに話を聞いたところ、「サイドバック、2センターのどちらも高いレベルでこなせますし、その上でドリブルで持ち上がって絶妙なスルーパスも出せます。1対1の守備能力はもちろんですが、ロングフィードがしっかりしている」と絶賛されていました。3月13日の鹿島戦(県立カシマサッカースタジアム)で浅野選手のゴールを生んだドウグラス選手へのロングフィード。そして、3月21日の大分戦(昭和電工ドーム大分)でセンターサークルまでドリブルで持ち上がり、川辺選手に出したスルーパス。いずれも得点につながった素晴らしいプレーでした。

「ありがとうございます。ただ、ロングフィードはまだまだ磨いていかないといけないと思っています。大分戦は、結果的に(川辺)駿が決めてくれたので良かったです。僕はコースが見えたのでドリブルで持ち上がっただけですから。今は、まずDFとして相手のストライカーに仕事をさせないこと、相手に嫌がられる存在になることが大事なので、そこに力を入れたいと思っています。DFのベースとなる仕事をちゃんとした上で、フィードなど、攻撃の一歩目となる技術を磨いていきたいです。一芸に秀でた存在というか、確固たるポジションを築けるようなDFに成長していきたいと思っています」