50m5秒9の俊足を持ちながらも高校時代は無名。それでも武器を磨きながら進化を続け、立命館大で開花した藤井智也。大きな可能性を秘めた広島の新しいスピードスターに話を聞いた。

今季、正式にサンフレッチェ広島と契約を結び、右サイドで躍動を続ける藤井智也選手。

◆想像していなかったプロの世界

―2020年、立命館大4年時に特別指定選手としてJ1リーグ15試合、ルヴァン杯2試合に出場。今季、正式に広島へ加入されました。まず、特別指定選手としての話が来たとき、藤井選手が感じた思いを教えてください。

「大学3年の夏にお話をいただいたのですが、正直プロサッカー選手になれるとは全く考えていなかったのでびっくりしました。立命館大に入ったのも、サッカー部と両立しながら進学するにはスポーツ推薦をもらうしかないということでやっと入学できたんです。だからプロの話をいただいたとき、本当に驚きましたし、自信がない、やっていけるだろうかという不安な気持ちもありました」

―3年時に関西大学リーグ1部でアシスト王とベストイレブンを獲得されているだけに自信がなかったというのは意外です。オファーは複数のクラブからあったと思いますが広島に決めた理由は?

「正式には3つのクラブからオファーをいただきました。広島は練習に参加したときの雰囲気が良かったので、それが決め手になりました。温かい人が多いので、ここならやっていけそうかなと。それと、カシくん(柏)の存在が大きいです。プレーを見てすごいと思いましたし、人間的にも尊敬できる選手だと感じました」

―柏選手とは、初アシストか初ゴールを決めたらワイヤレスイヤホンをプレゼントしてもらう約束をしたという話を聞きました。3月10日の札幌戦(エディオンスタジアム広島)で初アシストを決めておられますが、プレゼントはありましたか?

「欲しかったイヤホンは、誕生日に、ほかの人からプレゼントしてもらったんです。なので別の物ということで、クラッチバッグをプレゼントしてくれました」

―すごい!優しいですね。

「カシくんはすごいです。試合前でも陽気に話をしているので、そういうところも含めてすごい(笑)。いじられることも多くて、ホームゲームで前泊がない試合の日にシンプルな小さい鞄で移動していたら、『お前、本当にプロなの? そんな普通の鞄を持つなんて』って言われたり(笑)。試合前にちょっとメンタル削られるっていう……(笑)。あれはひどいなと思いました」

―お茶目!?な柏選手らしいエピソードですね(笑)。そんな柏選手ですが、同じサイドの選手として見習う点も多いのではないでしょうか?

「ボールを受ける前の駆け引きや、自由に動き回って流れをもたらすところなどは勉強になります。ただ、まずは自分らしくやろうと思っています。まだ、カシくんのような上手いプレーヤーと同じように、パスなどで魅せられるわけではないですから。今はスピードとかスプリントの回数という点で起用してもらえていると思うので、とにかくそこを意識しています」

―藤井選手が右サイドを駆け上がる姿は見ていてワクワクします。スピードだけではなくスタミナがあるところも、ルーキーらしい魅力ですね。

「ワクワクすると言っていただけるのはすごくうれしくて、僕にとっては最高の誉め言葉です。タフさやスピードに関してはルーキーだからとかではなく、歳を重ねても同じようにプレーしていきたいです。僕はそういうタイプのプレーヤーだと思っているので。僕よりも上手い、僕ができないプレーができる選手は山ほどいるので、自分ができることを頑張りたいです」