後半戦がスタートしたJ1。巻き返しを図るサンフレッチェ広島のサイドで躍動を続ける藤井智也。緩急をつけたスピードのあるドリブルは、相手チームにとって脅威の的となっている。チーム浮上の鍵を握る広島の新たなスピードスターに話を聞いた。

サイドを駆け上がる持ち味のプレーを活かし、得点機を何度も演出するサンフレッチェ広島・藤井智也選手。

◆主体性+コーチからの教えで負けないスキルを習得したい

―今季は5月からスタメンでの出場が続き、アシストなどで活躍されています。自分の武器を磨くために取り組んでいることはありますか?

「スプリントの次の段階で必要なのが、クロスであったり、フィニッシュの部分だと思うので、毎日自主的にクロスの練習に取り組んでいます。1日も早く上達しないといけない部分なので、一番最後まで残って練習することも多いです。あと最近では、池田フィジカルコーチに指導してもらいながら、お尻のトレーニングや上半身を鍛えるための懸垂をして、体の改良にも取り組んでいます。また、走り方も変えました。ずっと太腿の前側の筋肉を使って走っていたのですが、この走り方では肉離れを起こす原因になるという話を聞いたので思い切って変えてみました。一時的にスピードが落ちましたが、今はもう戻りました。長い目で見て取り組むことが大事だと感じましたね」

―サンフレッチェ広島OBの吉田安孝さんも藤井選手の成長ぶりを絶賛されています。特に、ボールの受け方が変わったことが大きいと言われています。

「沢田ヘッドコーチが現役時代にサイドバックをされていたので、受け方のことを聞いて教えてもらいました。迫井コーチにもたくさん話を聞き、映像を使ったりしながらアドバイスをもらっています。まだ自分では成長を実感できていませんが、コーチから教わることで、よりイメージができるようになりました。大学は監督1人、トレーナー1人という体制で選手が主体となって取り組むという方針だったので、マンツーマンで指導してもらうということはありませんでした。なので、しっかり指導をしてもらえることに感謝していますし、すごく効果を感じています。ただ振り返って思うのは、大学での経験も自分を成長させる時間になったということです。何が足りないかなど、人に言われる前に自分で考える力が身に付きました。自分自身と向き合っていくという面で成長できたと思っています」

―2年目の今年は、昨年との違いを感じることも多いですか?

「昨年は本当にしんどかったです。自分のプレーが全く通用しないし、『プロってまじでやばい』と思っていました。その中で、なんとか自分を評価してもらおうと必死に頑張っていました。それに比べて、今年は楽しくプレーできています。相手の裏を取ったり、駆け引きで抜いてみようなど、試合前にいろいろ考えることができているので、少しは余裕ができたということなのかなと思います。昨年は『安全に終わりますように』とお祈りして試合に臨んでいたぐらいなので(笑)。今も『安全に……』とは思いますけど、チームのためにプレーをしたいと強く思えるようになりました。それと、今季は4-4-2のフォーメーションでサイドバックを経験したおかげで、苦手だった守備の球際にも強くなりました。選手として、ひとつステップアップできたのは収穫です」

―『プロはやばい』とのことですが、チームメートのことはどう見ていますか?

「みんな上手いんですけど、(佐々木)翔くんは特にすごいです。本当に負けない。簡単なミスもしない。普通、誰でも波があると思うんですが、波を全く感じさせません。こんな選手、Jリーグの中でもそうそういないと思います」

―ここまでの試合を振り返ると、5月26日の浦和戦(エディオンスタジアム広島)で川辺選手のゴールを生んだ藤井選手の右サイドの駆け上がりは特に素晴らしかったです。

「実はあの瞬間のことをあまり覚えていなくて、あとで何度も動画を見返しました。ファーストタッチで相手選手を抜いたプレーに関しては、我ながら良かったと思います。ただ、ボールをもらう前の動きは、まだまだ改善が必要です。ほかにも課題は多くて、ファーストタッチは、思い通りの場所にボールを置けなくて慌ててしまうシーンが多いのでスキルを上げていかないといけません。クロスの質も上げていかないといけませんが、中にいる選手それぞれが得意とするクロスの入り方があるので、コミュニケーションを取って学んでいきたいと思っています」

―5月5日のルヴァン杯・横浜FM戦(エディオンスタジアム広島)も印象に強く残っています。96分、藤井選手からのクロスで鮎川選手が同点ゴールを決めました。

「脚がつっていたのですが、ゴールにつながって良かったです。(鮎川)峻とは寮で一緒だし、自主練もずっと一緒にやってきたので、コミュニケーションは取れていると思います。峻は構えるよりも飛び込んでくるタイプ。GKの前で、スライディングしながらでも触ってくれる貪欲さがあるので、その良い部分も、もっとクロスで引き出したいと思っています」

―最後に、広島で達成したいことや個人としての目標を教えてください。

「チームに貢献するプレーで、年齢とか関係なく引っ張っていけるような選手になりたいです。そして広島でJ1リーグ優勝を経験したい。とにかく、熱くガムシャラに、チームのために精一杯走ります!」