頼れるエースが、戻ってきた――。前半戦わずか3勝だった大瀬良大地が、後半戦開幕から2連勝。昨季の手術、今季の負傷離脱を経て、ようやく本来の投球を見せ始めている。シーズンは残り、50試合あまり。巻き返しへ、エースのフル稼働が期待される。

後半戦、エースとしての働きが期待される大瀬良大地投手。

◆前半戦、決して「不調」というわけではなかった

 東京五輪開催による約1カ月間の中断期間が終わり、プロ野球も後半戦が開幕。カープはシーズン再開からの6試合を2勝4敗と、「逆襲」を狙うにはやや物足りないスタートとなったが、それでも明るい兆しはある。

 この2勝はともに、苦しみ続けたエース・大瀬良大地によってもたらされたものだからだ。

 2018年に15勝を挙げて最多勝を獲得。プロ5年目にして、「エース」と呼ばれるまでに成長した。翌2019年も11勝と2ケタ勝利を挙げるも、2020年はコロナ禍によるシーズン短縮の影響もあり、コンディション不良にも悩まされた。9月16日には右肘のクリーニング手術を受けるなど、シーズン5勝どまり。

 投手キャプテンにも就任した今季は、まさに「正念場」のシーズンだった。3年連続で開幕投手に抜擢され、8回途中4失点(自責点2)。勝ち星はつかなかったが、2試合目の登板になった4月2日のDeNA戦では昨年8月22日以来となる勝利投手に。復活ロードは、順調かに思えた。

 しかし、開幕から1カ月たたないうちに右足を負傷。5月には一軍復帰を果たすも結局、前半戦は3勝に終わった。

 プロ8年目の今季は、節目の30歳を迎えている。フィジカル、技術面ともに投手としては「全盛期」を迎えていてもおかしくない。ただ、昨年からどこか歯車がかみ合わないもどかしい状況が続いたのも事実だ。

 その意味で、約1カ月のシーズン中断は、大瀬良にとって良い「切り替え」になったのかもしれない。8月13日の阪神戦は7回1失点。同19日の中日戦は7回無失点。ともに球数は100球を下回るなど、「省エネ」ぶりも光る。与えた四球も、2試合でわずか1個だ。

 実は今季は、前半戦も11試合中8試合でQS(6回以上を投げて自責点3以内)を記録するなど、決して「不調」というわけではなかった。

 そんな時、投手を助けるのが「勝利」という結果だ。打線とのかみ合わせで「勝ち」がなかなかつかなかった投手が、1つの勝利で変貌するのはよくあるケースだ。

 その意味で、後半戦2試合に登板し、2連勝としっかりと「勝ち星」がついたのは、大きい。2つの勝ち星が、エース・完全復活の狼煙となるのか。大事な終盤戦に向けて、大瀬良大地の投球から目が離せない。