スポーツジャーナリストの二宮清純が、ホットなスポーツの話題やプロ野球レジェンドの歴史などを絡め、独特の切り口で今のカープを伝えていく「二宮清純の追球カープ」。広島アスリートマガジンアプリ内にて公開していたコラムをWEBサイト上でも公開スタート!

 7月8日現在、カープは26勝41敗10分けで最下位。5位・横浜DeNAに1.5ゲーム差をつけられている。

 敢えていえば、最下位には“上り”と“下り”の2つがある。前者は若手が力をつけてきて、ファンをして「さあ、これから」と思わせるような最下位。そして後者は主力がピークダウンし、世代交代に差しかかる前の最下位。

 カープは1972年から74年まで、3年連続最下位に甘んじた。監督は72年が根本陸夫と森永勝也、73年は別当薫、74年は再び森永と猫の目のように代わっている。

 しかし、この3年間を“暗黒の時代”と呼ぶ者はいない。今振り返ると、むしろ“希望の時代”だったのではないか。

 野手では衣笠祥雄、山本浩二、三村敏之、水谷実雄、水沼四郎ら20代前半から中盤の若手がメキメキと力をつけ、レギュラーとして一本立ちしていった。

 75年、球団創設26年目にして初優勝を果たした時の主力選手たちである。3年連続最下位からの初優勝は、当時、奇跡と呼ばれたが、彼らは爆発寸前のマグマのような状態だったのである。

 残念ながら今のカープのチーム状態ではそうではない。何とか最下位は免れてもらいたいところだが、それすらどうかわからない。

 ならば、数年後、チームが再び常勝軍団としての輝きを取り戻すためのシーズ(種)を植え、育ててもらいたい。野手では林晃汰、小園海斗、中村奨成、坂倉将吾、石原貴規、大盛穂、羽月隆太郎、矢野雅哉、宇草孔基……。

 言うまでもなく彼らにとって最高の肥やしは、熾烈なポジション争いである。

(広島アスリートアプリにて2021年7月12日掲載)

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二宮清純(にのみや せいじゅん)
1960年、愛媛県生まれ。明治大学大学院博士前期課程修了。株式会社スポーツコミュニケーションズ代表取締役。広島大学特別招聘教授。ちゅうごく5県プロスポーツネットワーク 統括マネージャー。フリーのスポーツジャーナリストとしてオリンピック・パラリンピック、サッカーW杯、ラグビーW杯、メジャーリーグなど国内外で幅広い取材活動を展開。『広島カープ 最強のベストナイン』(光文社新書)などプロ野球に関する著書多数。ウェブマガジン「SPORTS COMMUNICATIONS」も主宰する。