スポーツジャーナリストの二宮清純が、ホットなスポーツの話題やプロ野球レジェンドの歴史などを絡め、独特の切り口で今のカープを伝えていく「二宮清純の追球カープ」。広島アスリートマガジンアプリ内にて公開していたコラムをWEBサイト上でも公開スタート!

 メヒア退団、というニュースが流れてきたので、カープのアレハンドロ・メヒアのことかと思ったら、西武のエルネスト・メヒアの方だった。

 ベネズエラ出身のメヒアは、新型コロナウイルスの影響で家族と合流できないことを気に病み、退団を決意するに至ったという。2014年にはシーズン途中の入団ながら34本塁打でホームラン王に輝いている。スイングスピードの速さは一級品だった。

 一方、広島のメヒアは、さっぱり良化の兆しが窺えない。今季は、ここまで18試合に出場し、打率2割1分6厘。長打力が売り物のはずなのに、ホームランはゼロだ。

 今季は開幕前からつまずいた。ドミニカ共和国に帰国していた1月、PCR検査の結果、新型コロナウイルス陽性が判明し、療養を続けていた。

 蛇足だが、昔、ヤクルトに釘谷肇という右の長距離砲がいた。身長186センチ、体重86キロ。当時としては日本人離れした立派な体躯を誇っていた。

 釘谷のニックネームは、“ユマの星”。ヤクルトがキャンプを張るアリゾナでは柵越えを連発し、メジャーリーグの関係者をもうならせた。2軍時代の75、76年には2年連続でジュニアオールスターに出場した。

 ところが、1軍にあがると借りてきたネコのようになるのだ。外角の変化球についていくことができず、31歳でユニホームを脱いだ。通算ホームラン数は、わずか8本。

 メヒアを見ていると、“ドミニカの釘谷”の印象が拭えない。内角を厳しく攻められ、最後は外角低め、ボールになる変化球で空振り。「ボール球には手を出すな」が鉄則だが、そんなに振りたいのなら、いっそのこと外角低めのボール球ばかり狙う練習をしてみたらどうだろう。いわば荒療治だ。年俸が安いからといって、チームはいつまでも待ってくれない。瀬戸際に立たされていることを自覚すべきだろう。

(広島アスリートアプリにて2021年8月2日掲載)

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二宮清純(にのみや せいじゅん)
1960年、愛媛県生まれ。明治大学大学院博士前期課程修了。株式会社スポーツコミュニケーションズ代表取締役。広島大学特別招聘教授。ちゅうごく5県プロスポーツネットワーク 統括マネージャー。フリーのスポーツジャーナリストとしてオリンピック・パラリンピック、サッカーW杯、ラグビーW杯、メジャーリーグなど国内外で幅広い取材活動を展開。『広島カープ 最強のベストナイン』(光文社新書)などプロ野球に関する著書多数。ウェブマガジン「SPORTS COMMUNICATIONS」も主宰する。